出版社内容情報
本書は、政治学の中心的問題である自由・隷属・帰属を、現代の福祉国家という条件のもとで考察したものである。第1章では「ふたつの自由の概念」(I・バーリン)以後の政治的自由をめぐる議論のなかでもちいられている説明概念をとりあげ、それらが自由にたいしてもつ含意を明らかにした。第2章では、「国家による自由」を保障するさいに福祉国家が示す特異な性格を考えるために、福祉国家を生みだした思想と実践の歴史的スケッチを試みている。第3章では、現代のシティズンシップをめぐる論争を紹介しながら、市民であることと自由の問題について考えている。第四章では、現代の自由の可能性に示唆をあたえる思想家たちの議論を再構成することをつうじて、現代の自由についての若干の展望を示した。以上、全体をつうじて探求されているのは、福祉国家を自由の条件とはするもののそれを礼賛することなく、また福祉国家を批判するがそれを全面的に批判することのない、そうした福祉国家における自由と帰属の可能性である。
内容説明
国家が保障する自由のなかで自律的市民としてのシティズンシップをどう確立すべきか。ポスト・リベラリズムの最新の成果。
目次
第1章 現代の自由論(自由の多義性;消極的自由と積極的自由;自由の論法と価値多元論 ほか)
第2章 福祉国家の思想史(福祉国家の危機;宗教的「慈善」の成立;慈善の制度化 ほか)
第3章 シティズンシップの現在(シティズンシップをめぐる状況;国民国家の形成とシティズンシップ;福祉国家のシティズンシップ ほか)
第4章 自由の領域(自由のゆくえ;社交体と統一体;人類の会話と詩の声 ほか)