出版社内容情報
主として、この世の終りが間もなくやって来るという終末論的恐怖心に焦点をあてている。ヨーロッパの歴史において、そのような恐怖心が果たしてきた役割は大きい。たとえば、コロンプスの新大陸発見も、動機はそこにあった。聖書によれば、世の終りが来る前に、キリスト教の福音が全世界に伝えられるはずだった.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』 263頁、より)
内容説明
膨大な資料を発掘・渉猟・駆使した心性史研究における記念碑的労作!海、闇、狼、幽霊、彗星、星、月、ペスト、飢餓、税への本能的で非理性的な自然発生的恐怖心。トルコ人、偶像崇拝者、ユダヤ人、女性、魔女と魔法使いをめぐる「恐怖の代替作用」と指導的文化のメカニズム。攻囲妄想的強迫観念のさまざまな発現形態の同根性を圧倒的迫力で論証した14‐18世紀西洋の壮大な深層の文明史。
目次
序論 恐怖心を追い求める歴史家
第1部 一般大衆が抱く種々の恐怖(恐怖の遍在;過去と闇;ペスト時代の集団行動の類型学;恐怖心と反乱)
第2部 指導的文化と恐怖心(「神を待つ」;サタン;サタンの代理人(1)―偶像崇拝者とイスラム教徒
サタンの代理人(2)―絶対的悪としてのユダヤ人
サタンの代理人(3)―女性
歴史の謎、魔法の大弾圧(1)―資料
歴史の謎、魔法の大弾圧(2)―解釈の試み)
結論 異端と道徳秩序
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
8
1348年の黒死病から17世紀に至る間、西洋社会は疫病、飢饉、災害、戦争、内紛、トルコ軍などの繰り返す襲撃を受けた。この襲撃の説明として神の国がサタンとその代理人(異端、魔女、ユダヤ人、トルコ人、女性など)に包囲されているという攻囲妄想が生まれた。人間の復権を唱えた初期近代は実は迫りくる悪魔への恐怖心の時代でもあった。自信と極度の恐怖というありえないような共存だが、漠然とした不安を明確な対象をもつ恐怖に転ずることによって初めて、人間の反撃が可能になる。攻囲妄想も不安から解放されるための一つの合理化なんだ。2024/10/21
陽香
0
199702202013/01/26