内容説明
犯罪者の多くは隔世遺伝により生れながらに犯罪者たる運命をもつ。19世紀末、ロンブローゾの生来的犯罪者説は、世界的反響を呼んだ。これを契機に社会学、人類学、精神医学の立場からの反論が相次ぎ、犯罪人類学、犯罪社会学、社会衛生学、法医学の進歩・発展を促した。興味深いエピソードを交えた異色の犯罪学思想史。
目次
第1部 波瀾万丈の生来性犯罪者伝説(頭蓋学者と骨相学者―実証主義の起源;チェーザレ・ロンブローゾと生来性犯罪者;実証主義の妄想から社会学の魅力へ;実証主義学派の恐るべき測定記録;最初の小競り合い;内部分裂を起こした偉大な犯罪人類学)
第2部 法廷での闘い(犯罪者の責任の重さを医学的に測定する;神秘的な正義に抵抗する十字軍;医師の試練に耐える司法官と殺人者たち;犯罪の医療化の現実への適用;犯罪問題と優生学の誘惑)
第3部 法医学者の登場(人類学から人体測定へ―アルフォンス・ベルティオン;法医学の実り多き時代;法医学の不幸、ラ・グットドール街の人喰い女;死灰の中から蘇るロンブローゾ)