出版社内容情報
『車輪の下』と同時代の初期短編集。青春の心の動きを類い稀な描写で描いた独自の世界。表題作は蝶の標本を巡る話で昆虫好きの訳者がこれまでの誤訳を詳細に正す。
【著者紹介】
一八七七~一九六二年。ドイツ、ヴェルテンベルク州生まれ。詩人、作家。一九四六年ノーベル文学賞受賞。代表作に『郷愁』『車輪の下』『デーミアン』『シッダルタ』などがある。
内容説明
1947年以来、現在も日本の中学国語教科書に掲載されている「少年の日の思い出」の新訳を中心に青春小説の傑作「美しきかな青春」など、全四作品を集めたヘッセの青春短編集。『車輪の下』と同時期に書かれ、甘く苦い少年時代、青年時代への追憶が詰まったヘルマン・ヘッセ独特の繊細で美しい世界が描かれる。
著者等紹介
ヘッセ,ヘルマン[ヘッセ,ヘルマン] [Hesse,Hermann]
1877~1962年、ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州生まれ。詩人、作家。1946年ノーベル文学賞受賞
岡田朝雄[オカダアサオ]
1935年東京生まれ。ドイツ文学者。東洋大学名誉教授。日本昆虫協会前副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナーキー靴下
84
美智子さまが新美南吉の「でんでんむしのかなしみ」に寄せる想い、それは美智子さまご自身のお姿に近いのではないかと感じ、私にとって何度も甦る話は何かと思い至ったのが、中学の教科書にあった表題作である。当時はエーミールカッコイイだったのが、謝って許してもらえる時代は終わり、という情操教育だったのだと後に理解し、さらに年月を経て、信頼できない語り手に注意、という意識が強くなった。追想に改悛の想いは感じられず、むしろエーミールをどこまでも嫌なやつに仕立てようという印象操作。この吐き気がするほどのクズが私自身なのか。2021/07/02
馨
61
中学時代に読んだ気がします。蝶をポケットに入れ粉々になるシーンは当時強く残っていた記憶があります。少年時代収集していた蝶から苦い思い出を回想し浮かび上がる後悔。私も幼き頃の思い出に今となってはしょうもないエピソードかもしれないが誰にも言えず自分の中だけの苦い記憶として残っているものがあります。あの時はああするしかなかったからついた嘘、態度。大人になった今も思い出すと後ろめたさが少しあり、記憶のほんの一部、だがすごい存在感で頭の中にあります。いつの日か誰かと懐かしみ語らう位軽くなると良いなと思います。2020/12/06
Apple
33
「ラテン語学校生」も「美しきかな青春」も、巷の青春を謳う小説とは一線を画する作品だと感じました。少年時代の甘美さが五感を通じて感じられるような文章なのであります。少年から大人になる瞬間のイメージも、俊烈に描かれていて、「大旋風」においては「ぱっくりと裂け目がひとつできてしまった。私のふるさとはもう昔のふるさとではなくなってしまった。過ぎ去った歳月の好ましいことと愚かさが私から離脱してしまった」というところが印象的でした。ストーリーがどれもスッキリしているし、訳も読みやすいので、万人に勧められる一冊です。2024/12/05
けいた@読書中はお静かに
33
本日7月2日はヘルマン・ヘッセの誕生日ということで教科書にも載っていた少年の日の思い出を読みました。中学生のころ読んだときもそうだったけど、なんかモヤモヤ~っとするどす黒いタールのようなものが心にはりつくような話でした。世の中にはどんなに誠実に謝っても取り返しがつかないことがある。2016/07/02
コージー
28
★★★★☆青春時代を描いた短編集。『少年の日の思い出』『ラテン語学校生』『大旋風』『美しきかな青春』の4編が収録。『ラテン語学校生』と『美しきかな青春』は、新潮文庫『青春は美わし』にて高橋健二訳でも掲載されている。相変わらずどの作品においても、ヘッセの自然の観察力と表現力に感嘆させられる。2022/06/04