出版社内容情報
反タバコ運動や食生活改善運動を強力に推し進めた第三帝国。その背後にある歪んだユートピア思想に迫る異色のナチス研究書。
【著者紹介】
ペンシルヴァニア州立大学教授。科学史学者。特に20世紀の科学技術、医学を専門とする。
内容説明
国家にとって「健康」とは何か?ナチス政権下において医学と科学が進んだ恐るべき目的に迫り、今日にもつながる問題を提起する異色のナチズム研究書。
目次
第1章 ヒューパーの隠された過去
第2章 ガン研究、組織化される
第3章 遺伝と民族に関する学説
第4章 職業病としてのガン
第5章 ナチス・ドイツの食生活
第6章 タバコ撲滅運動
第7章 残虐と凡庸と
著者等紹介
プロクター,ロバート・N.[プロクター,ロバートN.] [Proctor,Robert N.]
1954年生まれ。スタンフォード大学科学史教授。20世紀の科学技術、医学を専門とする
宮崎尊[ミヤザキソン]
上智大学外国語学部英語学科卒。法政大学講師、東進ハイスクール講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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1959のコールマン
54
☆4。タイトルと内容が微妙に違う。タイトルから「現代の『健康志向』とナチスの相似」が書かれているのかな?と誤解しそうだが(もしそうならあまりにもタイムリーな本だが)、著者は現代の(健康関係の)医学とナチスを安易に結びつけてはおらず、むしろ否定している。そして慎重な手法でナチ時代のドイツの健康政策を扱っている。ので、原題の「ナチスのガン戦争」の方がぴったり合う。とはいえ、ドイツマニアでしか知らなかったネタがゾロゾロでてくるので、そこは面白く読めた。ゲーリングが動物の生体実験を禁止した(p185)ってホント?2020/06/24
Nobuko Hashimoto
21
情報量が多いので、ちょっとずつゆっくり読み進めた。医学史の本だが非常に読みやすく面白かった。当時のポスターや写真なども掲載されている。強い民族、強い国家をつくるため、健康を重視し、ガン予防に多大な関心を寄せたナチ時代。食事、添加物、タバコ等が身体に及ぼす影響の研究が盛んに行われる。と同時に、遺伝的に劣るとされる人々を排除する動きも起こる。が、医学界にも多様な志向や動きがあって一枚岩ではないことも明らかにされる。過度な単純化を戒め、事実を丹念に見たうえで、現代的意義を熟考する必要があると教えてくれる。2021/12/14
非日常口
15
NHKBSでヒトラーが健全な自身を演出するためにドーピングをしすぎて体がボロボロになっていたという仮説ドキュメンタリーをやっていた。国家のために国民は健康であり貢献すべきという当時のドイツ社会の背景があるのだろう。優生学をカルト的に取り上げたナチスは他方で、マルクスが英にいた時のような毎日ジンを搔っ食らい格安の混ぜ物のパンを食べる短命な労働者からもわかるように、飲酒喫煙とガンの可能性や不衛生を危惧したナチスの健康対策を見ることができる。健全・健康とは何か、何の為にするのか?福利厚生がなぜ必要か?2018/05/03
空虚
6
断種手術、人体実験、安楽死。医学におけるナチスの凶行は凄まじい。加えて一部のナチ党員はオカルティズムに親和性あり、おしなべて「自然回帰」傾向がある。彼らは嫌煙家であり、アルコールも呑まず、菜食主義的傾向がある。例えばヘスはホメオパシーの熱心な崇拝者であり、ヒムラーはダッハウに広大なハーブ農園を作った。しかしその傾向を、ナチズム全般に敷衍するのは間違いだ、と著者は言う。ナチス政権下のドイツではガン撲滅が声高に叫ばれ、ガン研究を前進させた。肺ガンとタバコとの因果関係を突き止めたのは、実は当時のドイツだ(続く)2015/12/13
Ted
3
'15年8月刊。○内容は至って真面目なのにトンデモ本のような印象を受けるので、書名をもう少し考慮した方がよかったのではないか。原題どおり『ナチスによる癌撲滅の戦い』にすればよかったのに。2016/04/03