内容説明
ペリー来航から、セオドア・ルーズベルトによるポーツマス条約仲介にいたるまで、アメリカの姿は日本史の中からほぼ姿を消す。だが日本の明治期に当たるこの半世紀にアメリカで起きていた出来事こそ、日米衝突を不可避なものとする要因となったのだ。国内産業保護を基軸とするアメリカン・システムの綻び、イギリスを筆頭としたヨーロッパ諸国との領土紛争、国内の人種問題。南北戦争、米西戦争、移民排斥、ハワイ併合、フィリピン領有を経て、良好な関係にあった日本を仮想敵国と見なすまでのアメリカの動きを、米側資料により初めて詳細に描き出し、太平洋戦争の起源に新たな解釈を加えた画期的な書。
目次
日本人と支那人
カリフォルニアの争奪
太平洋シーレーン
南北戦争
大陸横断鉄道開通
「アメリカの湖」
岩倉使節団の失敗
フィラデルフィア博覧会
支那人排斥法
ハワイ国王カラカウア
グラント将軍の日本訪問
フロンティアの喪失
ハワイ攻防戦
米西戦争
白い艦隊(ホワイト・フリート)
著者等紹介
渡辺惣樹[ワタナベソウキ]
日米近現代史研究家。1954年生まれ。静岡県下田市出身。77年、東京大学経済学部卒業。日本開国以降の日米関係を新たな視点からとらえるべく、米英史料を広く渉猟(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hdo obata
15
青山繁晴氏が「国際関係なんて難しく聞こえるが、個人の人間関係に置き換えて考えるとよくわかる。」と言うような事を言っていたが、この本を読んでなるほどと腑に落ちた。日本が開国するに当たり、アメリカは良き師、良き隣人であった。アメリカにとって日本は教え甲斐のある良き弟子であった。時が移ろい,日清、日露の戦争に日本が勝利、アメリカはハワイ、フィリピンを併合、見渡せば太平洋でアメリカの脅威になり得るのは、日本の海軍力であった。どこから読んでも中身がずっしり詰まったいい本に出会った。もう一度読み返したい。2018/01/31
ネコ虎
15
明治期の日米関係を主にアメリカの歴史をたどりつつ見ていったもの。私の勉強不足でアメリカ史は何も知らずにいた。アメリカなんぞにロクな歴史はないぞと。しかし、丁寧な歴史事実の渉猟により、アメリカという国が何を考えて、どういう動きをしていたのか垣間見ることができた。当初は日本に好意的でむしろ英国と敵対していた。それがアメリカのフロンティアの喪失と日本の急速な勃興と勤勉な日本人への怖れが高まって、日米がいずれ衝突するという危惧を持つに至った。日本がアメリカを恐れていたのではなく、その逆だったとは驚きだ。2017/10/03
ポレ
14
渡辺惣樹おそるべし。もはや氏の著作が必読書であることに疑いの余地はない。米側資料を丹念に渉猟することにより、浮かび上がってくる歴史の大きな流れ。そこに着目すると日米衝突は不可避だった。本書は黒船来航前夜からポーツマス条約締結後までのアメリカ史を扱っている。日本史の中からアメリカが姿を消す期間、アメリカでどのようなことが起こり、日本及び日本人をどのように捉えていたか、そしてどのように変化していったのかを詳らかにしてくれる。2018/01/20
勝浩1958
11
日本の明治期にあたる半世紀のアメリカの出来事が語られています。大陸横断鉄道開通によって太平洋からアジアへの交易が強く意識され出した。サンフランシスコと支那沿岸部の中間地点がミッドウェーであり、将来の紛争を想定した場合、重要な戦略拠点になるのでアメリカは1867年に領有を宣言した。低賃金で働く支那人は白人の職場を脅かすので、『支那人排斥法』を施行した。日本がハワイに触手を伸ばしているという理由により、ハワイをアメリカに併合しようとした。サンフランシスコ市長のポピュリズム政策によって反日本人感情は煽られた。2015/08/12
新父帰る
8
1858年は日米修好通商条約が調印、1908年は米国大西洋艦隊16隻が横浜港に寄港。本書は、この日米間の50年間をアメリカ史を中心に俯瞰した歴史書である。よって、アメリカ国内の出来事が詳細に記述されている。リンカーンの奴隷解放宣言の真意を本書で初めて知った。幕府の遣米使節を迎える米国の歓待振りは、日米の蜜月の象徴であった。日米衝突の根源は米国のハワイ及びフィリピン併合とカルフォルニアの日本人排斥そして、日露戦争後の脅威に求められる。1908年にはルーズベルトは日米衝突の恐れを軍事アドバイザーに語っている。2017/01/24