訴えられた遊女ネアイラ―古代ギリシャのスキャンダラスな裁判騒動

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  • サイズ B6判/ページ数 278p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794215185
  • NDC分類 322.3
  • Cコード C0022

出版社内容情報

紀元前四世紀のギリシアといえばソクラテス、プラトンの頃。元遊女でアテネ市民のネアイラとその夫を訴追する裁判があったが、その記録は「弁論書」として残されている。古代ギリシア史の専門家である著者はその「弁論書」を読み解くことで、当時の市民社会の諸相を見事によみがえらせてくれる。売春制度や裁判制度、社会や文化の内実まで、精緻に作られたギリシアの都市国家をエピソード豊かに描いた無類に面白い歴史読み物。

内容説明

紀元前4世紀、ギリシャの都市国家コリントスで、捨て子だったネアイラは、奴隷身分ながら、美貌の遊女となった。身請けされたのち、首尾よく自由身分を得たネアイラは、弁論家ステパノスに見初められ、いっしょにアテナイで暮らしはじめる。それから30年、ステパノスにたびたび告訴されて苦汁を飲まされていた論客アポロドロスは、彼への復讐のために、2人の結婚は違法だと、ネアイラを法廷へと引きずり出した。職業裁判官も弁護士も不在のなか、市民から選ばれた501人の陪審員を前に虚実皮膜の弁舌を振るうアポロドロス。ネアイラは違法な結婚をしたと評決されて再び奴隷身分に突き落とされ、ステパノスは高額の罰金を払うことになるのか。それともアポロドロスが敗訴して罰を受けるのか。たぐいまれな一女性の生涯をたどり、訴訟中毒社会といわれた古代アテナイの日常を再現する。

目次

第1部 遊女として生きる(女将ニカレテの遊女屋;女奴隷ネアイラの所有者とそのほかの愛人たち)
第2部 ステパノスと子供たち(古代アテナイにおける男児と市民権;ステパノス、一家の養い手にして闘う男;パノの最初の結婚;一家の客と既婚の男たち)
第3部 裁判とその前史(私闘;脇役たち;ネアイラの裁判)

著者等紹介

ハメル,デブラ[ハメル,デブラ][Hamel,Debra]
ジョン・ホプキンス大学で西洋古典学(古代ギリシャ・ラテン)を学び(1985‐1989)、学士号を取得。その年にエール大学に移り、1993年に古典語及び古典文学の修士号を、1996年に博士号を取得。学位論文は「アテナイの将軍職:軍事領域における権力の範囲と行使(紀元前501/500年から同322/321年まで)」。1992年以降、エール大学ならびにウェスリーアン大学で非常勤講師、客員助教授として、ギリシャ語、ラテン語、古代史などを担当している

藤川芳朗[フジカワヨシロウ]
1968年、東京都立大学大学院修士課程修了。横浜市立大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

momonnga

4
古代ギリシャがいかに訴訟社会だったかが分かる一冊。遊女ネアイラを訴えたアポロドロスはそれまでに何でも被告や原告になった人物で正に裁判好きと言えるだろう。訴訟だらけのギリシャ社会ではアテナイ市民は陪審員として参加する義務があり現代の陪審員制度より負担は大きく裁判は古代ギリシャ人にとって身近なものだったが、現代のようにちゃんとした制度や裁判を取り仕切る裁判長はおらず如何に陪審員の心情に訴えるスピーチをした方が勝ちというのは驚き。陪審員は双方の長い訴えを聞いた後、評決の為に話し合う時間もなく完全に個人の裁量で判2019/10/29

seer78

2
古代ギリシアの裁判がどんなものだったのかがよくわかる本。訴えの内容によって、陪審員の人数は数百人から数千人に及んだという。近代とは違って、陪審員としての資質が問われることはなく、裁判当事者との面識があってもかまわない。法廷弁論は、これら大勢の陪審員の情動に訴えかける傾向が強かった。元遊女のネアイラの前半生が容赦なく暴かれることになる。ここから逆に、ソクラテスの弁明が当時としては珍しい、理性に訴えるものだったという特長がよくわかる。直接民主制がいかに血なまぐさいものになりうるかを知ることができる。2011/10/25

スーパーレア

1
タンスから出てきた。一年前以上前にゼミで読んだ本だ。今となっては卒論を書く気が失せきってしまったのだが、本についた大量の付箋とドッグタグを見ると、その出来はともかく、毎週レポートを仕上げていたことは一応褒めても良いかなと思えた。2019年は一応こなすことはこなしていたのか。本当に、その出来はともかく、だが。 レポートには「アテナイの裁判は観客参加型演劇のようだ」と書かれていた。弁論を執筆し、法廷の演台にのぼり、大きな声で自らを主張するような弁論家。ワイドショー的でもあり、闘技場的でもある。(文字数あるのか

めぐみこ

1
当時の裁判制度や人々の暮らしがわかって良い。アポロドロスへの反証という形で、ぐいぐい読ませる。しかし判決がわからないのが肩すかし。資料がないから仕方ないのだが…うーん。2010/12/06

1
題材は良いですし、内容的にもなかなか充実しているのですが、あからさまな「客寄せパンダ」的記述が余計です。当時の遊女の「サーヴィス」内容等は興味本位の読者を取り込む為?でも、この記述で喜ぶのはお子様だけでは…そうでもないのかしら。当該訴訟に関してはコンパクトに幅広い資料について読めるので、価値があります。2010/03/17

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