出版社内容情報
そうだ、小説を書こう!二人の少年の思いつきは数奇な運命をたどる。自伝的物語に小説家らしい企みが凝らされ、トロワイヤ文学を存分に味わえる佳作。
内容説明
革命に揺れるロシアからフランスへ家族とともに亡命してきた少年は、パリで友人ニキータと再会を果たした。そうだ、小説を書こう!と、少年二人は意気投合。題は…そう、『サトラップの息子』だ。荒唐無稽な思いつき、次々繰り出される「盛り上がり」。日曜ごとの小説作りの試みはニキータ一家の夜逃げによって唐突に中断する。ニキータの行方は、そして『サトラップの息子』の続きは―。二人の少年に訪れる運命の皮肉。著者自身が実名で登場する自伝的物語に、小説家らしいたくらみを凝らした傑作。
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ][Troyat,Henri]
1911年モスクワ生まれ。1920年に一家でフランスに亡命。1935年に処女作『仄明り』がポピュリスト賞を、1938年に『蜘蛛』がゴンクール賞を受賞。1959年に異例の若さでアカデミーフランセーズ会員となり、現在に至るまで作品を発表し続けるフランス文学界の重鎮
小笠原豊樹[オガサワラトヨキ]
1932年生まれ。岩田宏の名で、詩、小説、評論多数
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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シン
6
いい作品を書く作家だ。読んで損はない。他の作品も読んでみよう。2016/02/18
ゆかっぴ
5
自伝のような物語。亡命し、新たな土地で生きることになる一家。「国籍がない」という言葉にはっとさせられました。苛酷な経験を冷静な文章で綴られるとなお一層当時の現実が浮かび上がるようです。2016/05/29
星落秋風五丈原
4
1920年、革命に揺れるロシアからフランスへ家族とともに亡命してきた少年リューリクは、パリで友人ニキータと再会を果たした。ロシアでの贅沢な生活を懐かしみ、望郷の念を捨てきれない両親を尻目にリューリクは異国の空気に馴染み始めていた。そうだ、小説を書こう!少年2人は意気投合するが。タイトルは『サトラップの息子』と決定した。しかし思わぬ事件が二人の共同作業を中断することに。2005/12/08
ベック
3
トロワイヤといえば歴史物というイメージしかなったが、こんなに素晴らしい小説も書いていたのだ。本好きには、ググッとくる内容で、本書の主人公(トロワイヤ自身)の感情の揺れは微妙な強弱をともなってビンビン伝わってくる。亡命、異邦人としての生活、いわくありげな友との挑発的な邂逅、そして文学への情熱。少年トロワイヤは、多感な時期を真摯に乗り越えていく。しかし、亡命なんて劇的な経験をするというのは、どんな感じなのだろう?祖国を追われるとはどういう気持ちなのだろう?トロワイヤ自身は子供の身ゆえ新しい環境にも順応していく2006/09/01
保山ひャン
2
ロシアからフランスに家族で亡命してきた少年は、友人と二人で小説を書くことにした。少年は後にフランスに帰化し、フランス風にアンリ・トロワイヤと改名して作家になる。第二次世界大戦下のフランスも描かれて、自伝かと読めるのだが、自伝のふりをした小説なのだそうだ。これは面白い!2017/04/07
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