出版社内容情報
巌流島の決闘のあと武蔵はどこへ消えたのか。九州に残る資料を精査し、かつてない実像を描いた最新論考。中世文化の影響が色濃いお伽衆(殿様側近に侍る芸人)としての武蔵像。
内容説明
従来の宮本武蔵像は小説や映画演劇等によって極端なイメージが作られてきた。虚飾をはぎとり、残された資料をもとに実像を構成してみると、実は中世文化を継承した意外に由緒正しい出自のお伽衆的存在の武芸者像が浮かび上がる。二人の著者による最新論考。
目次
第1部 武蔵はお伽衆だった(肥後熊本にはじまる「武蔵学」;出自―武蔵、作州に生まれる?;父子鷹―武蔵、養子に行く;流浪―武蔵、売り込む;決闘後の足どり―武蔵はどこへ消えたのか ほか)
第2部 古文書・書画からさぐる武蔵像(毀誉褒貶の武蔵像;書状・奉書・口上書等を読み解く―武蔵はなぜ熊本にやってきたか;兵法書奥書・相伝を読み解く―武蔵虚像を生んだ伝承の背景;絵画を読み解く―武蔵の真筆とはいいがたい“三大傑作”;書跡を読み解く―気どりのない筆癖が物語る武蔵の実像 ほか)
著者等紹介
井上智重[イノウエトモシゲ]
1944年、福岡県八女市生まれ。熊本大学法文学部卒業。佐賀新聞社を経て、熊本日日新聞社に入社。現在、同社編集委員室長・論説委員
大倉隆二[オオクラリュウジ]
1948年、熊本県玉名市生まれ。関西学院大学文学部美学科卒業。同大学院中退。八代市立博物館(館長)を経て、熊本県立美術館に勤務。現在、同館学芸課長
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感想・レビュー
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紫
1
軽いタッチの題名と表紙のデザインからライトな剣豪時代小説かと思いきや、がっつりと濃い宮本武蔵検証本。前半は新聞マンによる平易な語り口の武蔵論。直前に読んだ『宮本武蔵謎多き生涯を解く』という本は一次史料限定でしたが、こちらは明らかな間違いでないなら二次史料の記事も取り込んでいこうという姿勢。「実際の武蔵はおしゃべりで、どこか洒脱でサービス精神にあふれ、座談の名人だった」という虚構のイメージとはまるで異なる武蔵像になるほどと納得。後半は美術館学芸員による検討で、こちらは学術論文レベルに難解であります。星4つ。2018/09/15