内容説明
ところはミュンヘン。合気道の道場を営む夫をもつ紀美子は「理想的な」夫婦生活を送っていた。ところが三番目の男の子の出産のあと、突如として死んだ恋人が現れる。紀美子は死んだ恋人とまじわり、久しく忘れていた快楽の海を漂う。その後、恋人はしばしば現れるようになり、ついには夫との抱擁の間にも現れ、紀美子は夫ではなく恋人に身体を開く。それは二人の男の間で心を決められず地獄に堕ちた能「求塚」の菟名日処女にも似て―。端正な文体で官能の極致を照射した会心作。
著者等紹介
川口マーン恵美[カワグチマーンエミ]
1956年大阪生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、ドイツのシュツットガルト国立音楽大学大学院に留学。82年ピアノ科を修了。同年エバーハルト・マーンと結婚。現在三児の母。90年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』で彗星のように登場。強烈な批評精神によって論壇に衝撃を与えた。その後、『ドイツからの報告』『あるドイツ女性の二十世紀』『国際結婚ナイショ話』などの優れたノンフィクション作品を発表。98年、最初の小説『不倫!』で上梓、高い評価をえた
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感想・レビュー
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ねなにょ
12
図書館にあったので。もっと緊迫感のある、ドキドキするようなストーリーを期待していたんだけれど。登場人物たちがみんな暢気で自分勝手。2016/10/16
浮草
4
ドイツに暮らす日本人夫婦。夫には大学紛争で亡くした兄にまつわる後悔があり、妻には夫と出会う前に亡くした 結婚まで考えた相性抜群の相手への思いがある。出産直後で生き物としての自分、ただ感じるだけの存在という無力感、ホルモンバランスの崩れなどから、感情的な起伏を生じる。そこへ昔の男を思い出させる手紙が。また夫にも過去からの訪問者が現れ心乱れる。過去やパートナー以外の存在に心動かされても表面はお互い変わらない。それは外国だからでもなく、産婦だからでもなく誰にでも起こり得ること。とても読みやすく一気読みでした。2016/11/15