内容説明
1990年5月、栃木県足利市で4歳の幼女が誘拐され殺害された。1年半後、市内に住む45歳で独身の幼稚園バス運転手が容疑者として浮上、DNA鑑定と本人の自供によって事件は一気に解決したかに見えた。ところが一審裁判の途中で被告人は自供を全面否認し、自らの無実を訴える。判決は無期懲役であったが、被告はただちに控訴、以後、冤罪事件として争われることになった。目撃者はなかった。物証もなかった。証拠は唯一DNA鑑定の結果だけだった。だが、当時導入されたばかりの鑑定法には疑問をもつ者も多かった。さらに、辻褄の合わない供述、犯人であることを前提とした精神鑑定等、この事件にはあまりにも多くの疑問が解かれぬままに浮遊していた。DNAが捕らえた男は、ほんとうに真犯人だったのか。6年以上にわたった精緻な取材をもとに、事件の驚くべき真相に肉薄する。
目次
控訴棄却
第1部 少なすぎる証拠(疑問;奇妙な供述;再現;DNA鑑定;判決)
第2部 犯人でなければ困る(捜査;精神鑑定;逮捕;自白;闇)
叫び
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
108
1990年に発生した足利事件の冤罪を 追った作品である。実用化されてまもないDNA鑑定の精度、コロコロ変わる自白…混乱する 法廷の光景が蘇る。一体真実はどこにあるのか? 目撃者もなく、物証もなく、DNA鑑定の結果だけが 唯一の証拠だったこの事件…DNAが 捕らえた男の叫びが哀しい…そんな作品だった。2022/11/30
ボンタンパンチ
1
昔読んだ本。足利事件の冤罪を強く訴えたノンフィクション。清水本と違い、淡々として丁寧に進めていくのが違った趣でいい。
あき
1
足利事件の追跡ノンフィクション。最高裁で菅谷さんの無期懲役が確定した時点でこのような冤罪を訴える本が出ていたことに素直に驚いた。黎明期のDNA鑑定と見込み捜査、それに伴う自白への疑念。そして検証。佐々木譲氏のいうとおり、実に誠実で読み応えのあるルポだった。 被害者のご両親の心の内を伝える最終章には、ただ涙。2013/03/02
呑舟
1
菅家さんの釈放で一躍脚光を浴びた「足利事件」だが、裁判とリアルタイムで取材し、2001年の段階で本書が刊行されていたことにまず驚き。DNA鑑定にばかり注目が集まりがちだが、警察が何としても犯人を逮捕したかった“動機”や、菅家さんの知的能力もきちんと検証されている。そして何と言っても珠玉なのは最終章だろう。2009/09/27
ちむ
1
菅谷さんは死刑でなくて無期懲役の判決でよかったとつくづく。「犯人」が見つかることで憎しみの対象ができるけれど何の解決にも救いにもならない、気持ちの置き場所をちょっとづつ折り合いをつけて清算していく外にない、という被害者のお父さんの談が重い。2009/07/02
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