内容説明
十六世紀、ヴェネツィア―商人、船乗り、異国の使節たちが運んでくる奇々怪々な物語に一人の修道士がじっと耳を傾けている。その名はフラ・マウロ。心のうちに夢想と観想とを繰り広げながら、彼は世界中の人びとの営みや思惑のすべてを取り込んだ、壮大な世界地図をつくろうとしていた。謎めいた迷路のような情報源をもとに地図を完成させたとき、この孤独なルネッサンス人が見出した「世界」とは…。人間精神が大きく開花しようとしていた時代に、事実とは何か、私とは誰かを問い続けた修道士の魂の変容と遍歴を描く、歴史哲学ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
4
『第四の大陸』からの流れで地図がらみものを読んでみたくて。地図作成の過程を追体験できるかなと思ったけれど、早めにどうやら違うなと気づいた。それはそれで『シャムロック・ティー』のごときアネクドートの宝石箱に浸れるかと思ったらそうでもなかった。まあでも「私たちの読む歴史というものは歴史学者や専門家たちの丹念な偽造文書に他ならないとも言える」というのは納得だし、ここでは偽造文書の偽造を通して著者のみる世界が見えてくる、という構造は面白い。ところで、「僧侶ジャン」は「プレスター・ジョン」の方がわかりやすくない?2015/11/06
すけきよ
0
妄想すれすれの博物的知識ぎっしり(こればっかだな)の地図作成物を期待してたんだけど、主人公の世界地図に例えられた現実認識と内省の哲学物でしたわ。2002/12/10
R
0
★★★★2020/10/31
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- 洋書
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