内容説明
ヘルダリンの詩的エクリチュールの「中心」(世界は根源なき深淵)を外れた軌跡は、絶対者(神)に対し距離を取りながら(また自我の専制と最終審級の留保の境位)、その「痕跡」をたどらざるをえなかった(テロスなき無限に生成するポエジーの翼を言語の限界から限界の言語へ脱中心的に拡散してゆく詩想的差延運動)“近代”という悲劇(暗黒の夜)の象徴である。
目次
序章 ポスト・モダンとヘルダリン
1章 ヘルダリンの危機意識と近代合理主義
2章 ドイツ観念論とヘルダリンの「根源」の思想
3章 ヘルダリンの言語哲学
4章 ハイデガーのヘルダリン解釈をめぐって
5章 ヘルダリンのドイツ性と祖国的転回
6章 へーゲルとヘルダリン
終章 「近代」の限界とヘルダリン
感想・レビュー
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トックン
2
ヘルダリン再考。18世紀に「超越論的シニフィエ=神」の不在を経験し深淵を訪ね、シェリング・ヘーゲルと親しかった詩人は仏革命に熱狂すると共に失望した。ロマン派に位置づけられる彼をシラーの古典主義的美学やフィヒテの知識学に影響を受けたが初期ロマン派(ノヴァーリス、シュレーゲル)の「絶対的自己」(フィヒテ)を基盤に据えた無限後退的なイロニーでなく、ハイデガーが解釈する本質の隠蔽性を暴く詩人としてでもなく氏はアドルノ的な可能性による不可能性の自覚を目指した「愚直」な人と規定する。仲正の詩人の気概がちと鼻につくが。2017/06/30