内容説明
ファウストの錬金術からデリヴァティヴまで…。近代的「貨幣演劇」をささえる幻燈装置の解体に向けて。
目次
1 ゲーテと近代の錬金術
2 貨幣の社会的記号論:『経哲草稿』から『経済学批判要綱』へ
3 経済学批判のアポリア:物象化と記号
4 ゾーン=レーテルの社会的存在論:貨幣と“認識”の条件
5 貨幣に潜む超越論的主観性:『否定の弁証法』への道
6 “亡霊”としての貨幣:デリダからマルクスへ
7 マルクスと廣松の“亡霊たち”
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島県生まれ。東京大学綜合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。金沢大学法学部教授。社会思想史・比較文学を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
37
人間の能力を増強させる代わりに人間の自然的な摂理に背く、いわば魔術的な方法であるというゲーテ『ファウスト』の引用をはじめとして、哲学における貨幣論は経済学と異なり、より抽象性が増す。著者が哲学をフィールドとしていることもあって、本書の議論は哲学者がほとんどだ。しかし、第4章でゾーン=レーテルという経済学者の存在論によって経済学の方から哲学に架橋して哲学を考察する議論が行われており、芸の細かさとフィールドの広さにいつもながら驚く。拡大され均質化された近代における人間関係が、物と物との関係においての方が、より2023/05/15