出版社内容情報
真理はわからないが、これだけは断言できる
この本を読むために生まれてよかった
――飲茶(『史上最強の哲学入門』ほか)
反出生主義。「生殖をすべきではない」という思想。怖そうだけど、実は優しさでできている。すでに親になってる人は、怒られている気がするかもしれない。でも小島先生はたぶん「子どもは何にも悪くないのだから、優しくしてね」と言いたいだけだ。
――ネオ高等遊民(哲学YouTuber)
目次
1 反出生主義にふみ込む前に(なぜこの本を読むときに倫理の問題を考えなければならないのか?;中絶は不道徳か否か?;未来への責任はあるか?)
2 「生まれてこないほうが良かった」とはどのようなことか?―ベネターの思想を読み解く(『生まれてこないほうが良かった』全体の構成;可能的存在についての価値判断;基本的非対称性とその説明力 ほか)
3 反出生主義について考えるうえで重要なこと(『生まれてこないほうが良かった』がミソジニーである理由;自殺について;親を責めても良いのか? ほか)
著者等紹介
小島和男[コジマカズオ]
学習院大学文学部哲学科教授。学習院大学文学部哲学科卒業、同大大学院人文科学研究科哲学専攻博士課程修了。博士(哲学)。専門はギリシャ哲学、反出生主義(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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奏市
12
川上未映子さんの『乳と卵』を読んだ時、主人公の姪の緑子が生まれてこないほうがよかった、子供は産みたくないみたいな考えの子で、たまたまその日新聞の本の書評で知った反出生主義と関係あるなと思い、引っかかっていた思想。図書館の新刊コーナーで目につき手にとる。こうしたエクスキューズを入れないと憚られるような思想の本を出す著者も苦労が多いとの後書。その思想に与するわけではないが、様々な事を考える契機となった。この世が「地獄」であると感じる人はどうしても一定数存在するだろうし、そう思わない我々は恵まれているものかと。2025/02/09
彩
6
現代思想「反出生主義を考える」を先に読んでいたけど、そちらは反対派の人が多かったので本書の肯定派の易しい解説を読むと新たに理解できるところがあった。苦しい人に対してどのように声をかけるべきか、のところがよかった。2025/01/26
zunzun
6
ベネター『生まれてこないほうが良かった: 存在してしまうことの害悪』の訳者である小島氏による本。2024年に新装版がでたので、ついでに解説書もモノされたということなのかもしれない。ベネターに対しての反論(パズル解きにすぎないのでは?自○はいいのか?ミソジニーでは?快が苦をうちけせばよくね?)などにもこたえており、単に「反出生主義」を解きあかしているだけではない。 近年の思想でこれだけ人口に膾炙したものも他にない。哲学に興味がなくとも耳馴染みがあることばだが、実際にこういう本を読んで色々考えてみてほしい2024/12/30
Tanaka
5
良書。ベネターにより現代哲学の主要論点の一つとなった「反出生主義」を、その訳者自身が解説する。大前提として「反出生主義」の主張を「始める価値」と「続ける価値」に分けて考察する点は分かりやすい。その他ベネターの主張についても平易に解説がなされており、まさしく「反出生主義入門」と言えよう。また、「反出生主義」に対して筆者が主張する「反-出生奨励主義」も興味深い。文中に散見される「女性性」への筆者の言及は少々くどく感じるが、それだけ慎重であるとも評価できる。総じて「反出生主義」に興味がある者は読むべき一冊だ。2025/05/18
なつのおすすめあにめ
4
SNSでの「反出生主義」は「毒親」と「親ガチャ」と混ざってしまい、人類レベルで考えているわけではなくて、愚痴の範疇に矮小化されているような印象があったのだが、この入門書を読めばその原因が理解できる。「始める価値」と「続ける価値」の違いがわからないで混同している人が多いからだろう。自分の理解としては、有名な「トロッコ問題」に対するアクロバティックな回答としての反出生主義、そもそも人間がいなければ誰もトロッコに轢かれる事はない……。「快苦の非対称性」はかなり強固なロジックなのだが、なるほどミソジニーは弱点か。2025/05/01