出版社内容情報
フロイトの幻の著作『ウィルソン』の数奇な運命
精神分析の祖、ジークムント・フロイト。死後30年近く経った1966年、ある遺稿が刊行された。『トーマス・ウッドロー・ウィルソン』。ウィルソンのもとで働くなかでその行動に疑問を抱いたある外交官の発案で共同執筆された、大統領の「心理学的な肖像」を浮き彫りにする著作だった。しかし脱稿から30年以上刊行されず、刊行されるや、遺族や精神分析家たちから、その内容に疑問の声があがった。フロイトはどの程度執筆に関与していたのか。なぜ出版までにこれほどの年月を要したのか--。原本を偶然発見した研究者が精神分析・政治・歴史の垣根を超えて書き上げた、圧倒的ノンフィクション。
内容説明
米大統領の行動を心理学的に分析したフロイトの問題作『ウィルソン』。その刊行を画策し、また30年以上にわたる刊行の延期の原因ともなったのは、国際情勢の裏側で暗躍する、あるひとりの外交官だった―。時代と切り結んだ外交官と分析家の真の意図を、新たに発見された原本を含む膨大な史料をもとに甦らせる。一冊の本から浮かび上がる、知られざる政治史。
目次
第1章 ヴェルサイユ条約での米国の敗北
第2章 単独行動者の第一歩
第3章 パリとウィーンのアメリカ人
第4章 なぜフロイトはブリットの提案を受け入れたのか
第5章 ヴェルサイユ条約を理解し、ハウス大佐の資料を閲覧すること
第6章 プリンストンの亡霊
第7章 世界の舞台での「繰り返し」
第8章 フロイトとともにウィルソンを精神分析する
第9章 ローズヴェルトに認められて
第10章 一九三三年―初代駐ソ米大使 スターリンを知るために
第11章 フランス大使として―ヨーロッパの平和を守るために
第12章 ミュンヘン以後―フランスの軍備増強と米国の戦争準備
第13章 奇妙な戦争
第14章 世界大戦のさなかで
第15章 冷戦の中で
第16章 『ウィルソン』ついに出版される
第17章 父の帰還
第18章 明らかにできなかった秘密
第19章 ウィルソン―フロイトとブリットを超えて
結論
著者等紹介
ヴェイユ,パトリック[ヴェイユ,パトリック] [Weil,Patrick]
1956年生まれ。政治学博士。フランス国立科学研究センター(CNRS)研究主任(パンテオン・ソルボンヌ大学(パリ第1大学)現代世界社会史研究所所属)。イエール大学客員教授。移民、市民権の問題などを研究。統合高等審議会委員(1996‐2002年)、共和国におけるライシテ原則適用に関する検討委員会(スタジ委員会)委員(2003年)、国立移民史博物館諮問評議会評議員(2003‐2007年)などを歴任
大嶋厚[オオシマアツシ]
1955年生まれ。翻訳者。上智大学大学院博士前期課程修了。元パリ日本文化会館副館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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