出版社内容情報
この私にとっての倫理を考える
倫理的な実践に「個人的」な要素を含み込んで独自の哲学を作り上げたバーナード・ウィリアムズ。人格・倫理・運などさまざまな要素が絡まり合いながら実践されゆく人間ひとりひとりの営みに真摯に目をむけ、倫理の核心に迫った哲学者の軌跡を追う。本邦初の入門書。
内容説明
倫理的な実践に「個人的」な要素を含み込んで独自の哲学を作り上げたバーナード・ウィリアムズ。人格・倫理・運などさまざまな要素が絡まり合いながら実践されゆく人間ひとりひとりの営みに真摯に目をむけ、倫理の核心に迫った哲学者の軌跡を追う。本邦初の入門書。
目次
はじめに 強さのペシミズム
第1章 哲学はいかに倫理を語るのか ウィリアムズ倫理学の方法論
第2章 倫理は理論化できるのか 倫理学理論批判
第3章 倫理は運を超えるのか 道徳批判
第4章 政治はいかに倫理の問題となるのか 政治的リアリズム
おわりに 反道徳の倫理学
著者等紹介
渡辺一樹[ワタナベカズキ]
1995年生まれ。エディンバラ大学大学院修士課程(哲学)、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程(哲学)修了。現在、同大学院博士課程在籍。日本学術振興会特別研究員(DC1)。専攻は、道徳哲学・政治哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
19
『生き方について~』を読んだとき、議論は難しいし、なんだか他人の批判ばかりしているようで、積極的に言いたいことが何なのかよく分からなかった。本書によればウィリアムズが拘っていたのはリアリズムだということになる。それは規範倫理の学説が綺麗事しか述べていないという批判というよりも、私たちの生の中に倫理的なものがどう現れてくるのかについてそれらの学説が誤って考えているという批判である。つまりウィリアムズは人間観を問題にしている。そして実践の場面を捉えなおし、生き方について新しい見方を見出そうとしている。2024/04/18
Bevel
7
ブレイクスルーくれそうな感じではなかった。批判をやり抜いたすごさに思いをはせることはできるけど、ぼんやりする。功利主義批判、モラリズム批判はもっと破壊力あるのありそうだなとか。ピンとこなかった理由に、人生の山場のイメージがずれてるところがある。究極の二者択一をプロジェクトに基づいて決めることが倫理的に賞賛されうるものとして書かれるけど(死ぬとわかっていてナチスへの抵抗を行う夫婦の例)、むしろ淡々としてるイメージがあって、後悔とかもがきみたいな話につながらないのがある。「道徳と感情」の話が一番好きだな2024/08/25
zunzun
6
バーナード・ウィリアムズは日本では殆ど紹介されてない哲学者である。訳された本も『道徳的な運: 哲学論集一九七三~一九八〇』と『生き方について哲学は何が言えるか』ぐらいである。著者の渡辺一樹によれば、「英米圏でもまともな入門書は一冊ぐらいしかない」らしく、あまり人気はないようだ。そんな哲学者に私ズンダが興味をもった理由は哲学雑誌『フィルカル』で渡辺がウィリアムズについて連載してたというのと、古田徹也『不道徳的倫理学講義: 人生にとって運とは何か 』を読んでいたからである。2024/08/10
雪駄
4
例えば人生を楽しもうと何か試みる時に、恥ずかしいという感覚がそれを邪魔しているような気がした。以降、恥の概念について理解したいと思い、「恥と必然性」がヒットした。書店の棚に並んであった本書も理解を深めるために偶然購入し、こっちを先に読んだのだが、とても読みやすくいい本だと感じた。最大公約数的な普遍道徳ではなく、ジャストその時の個人を考えた倫理学かー。確かに人生の選択は突然現れるし、その帰結は運の要素が絶対関わってくる。誰もが他人事ではないという意味で全国民必読の書かも。2025/05/11
人間の手がまだ触れない
1
ウィリアムズの日本におけるたぶん唯一の入門書。青土社から出てるこのシリーズはどれも評判がいいけど、この本も大変面白かった。最初はなんかお説教っぽいというか、人生がうまくいっている人の話でしかなくね?という感じがしたが、後半の自由意志論争からだんだん面白くなっていって、全体としてはかなり楽しく読めたと思う。ただ、途中の必然性の議論の箇所で例として引かれていた『タクシードライバー』を私は見たことがなかったので、いきなり容赦なく全編を完全にネタバレされたのはなんか笑ってしまった。2025/05/12