出版社内容情報
トラウマ的な出来事を経験した人びとにとって、文学や文化は生きのびるための表現となりうるのか--
多和田葉子、李琴峰、古谷田奈月、森井良、林京子、大江健三郎、岩城けい、小野正嗣といった現代作家の作品を丁寧に読み解き、物語を受けとるという営みとは何か、小説と読者が出会うとはどういうことか、それにクィア・フェミニズム批評はどうかかわるのか、自身の経験とときに重ね合わせながら文学や文化の力を見出していく。気鋭の研究者による、トラウマという語ることがむずかしい経験を語るために物語があるのだということを、そして何より新たな対話の可能性を信じるすべての人におくる、画期的な文学論。
内容説明
物語の力を信じる画期的文学論。
目次
トラウマを語ることはできるか?
境界の乗り越え方―多和田葉子『容疑者の夜行列車』論
改稿が示す「奇跡」―李琴峰『独り舞』論
上演された自伝、聴き手たち―古谷田奈月『リリース』論
クィアな記憶の継承―森井良「ミックスルーム」論
「バラカ」から「薔薇香」へ―忘却に抗う虚構の強度をめぐって
変わり身せよ、無名のもの―多和田葉子「献灯使」論
記憶と核の時代―林京子の仕事をめぐって
組みかわる物語―大江健三郎「美しいアナベル・リイ」論
読みなおすこと、回路をつくること―大江健三郎と「憑在論」
たがいを支えあう言葉の回路―岩城けい『さようなら、オレンジ』論
前未来形の文学―小野正嗣『獅子渡り鼻』論
記憶を伝えるということ―多和田葉子における「星座小説」
言葉が生まれ、物語が生まれる
著者等紹介
岩川ありさ[イワカワアリサ]
1980年兵庫県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、早稲田大学文学学術院准教授。専攻は、現代日本文学、クィア・スタディーズ、フェミニズム、トラウマ研究。大江健三郎や多和田葉子らの作品を中心に、傷ついた経験をいかに語るのか、社会や言語、歴史との関わりにおいて研究している。本書が初の単著(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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