出版社内容情報
コロナ時代に書き記された、抵抗の書
コロナ時代において、主権的権力はいかに〈例外状態〉を継続させようとしているのか。私たちにとっての自由や、安全の意味はいかなる変容を遂げているのか――。 発表されるやいなや世界中に議論を巻き起こした、アガンベンによるコロナ時代の格闘の軌跡。
内容説明
コロナ時代に書き記された、抵抗の書。
目次
エピデミックの発明
感染
説明
私たちはどこにいるのか?
ペストに関する省察
エピデミックは例外状態が規則となったことを示している
社会的距離確保
一つの問い
剥き出しの生
新たな省察をいくつか
真と偽について
宗教としての医学
バイオセキュリティと政治
ポレモス・エピデーミオス
学生たちに捧げるレクイエム
汚らわしい二つの用語
法権利と生
緊急状態と例外状態
恐怖とは何か?
著者等紹介
アガンベン,ジョルジョ[アガンベン,ジョルジョ] [Agamben,Giorgio]
1942年生まれ。美学・言語哲学から出発し、現在政治哲学を中心に著作を発表している
高桑和巳[タカクワカズミ]
1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部教授。専門はイタリア・フランス現代思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
44
國分と千葉の『言語が消滅する前に』で引用されていたので読んでみました。数少ない存命で有名な哲学者のひとりです。当然コロナを経験しています。コロナに言及した文章で賛否両論が巻き起こりました。その議論は日本でいう「ウィズ・コロナ」と「ゼロ・コロナ」の対立として考察に値しますし、議論も比較的明快で、特に本書の文章は情報量が少なく、頑張れば読める量の本です。少なくともジジェクの訳の分からない本よりも読むに値することが書かれていると思います。自由を制限する「例外状態」(法の宙吊り)は、ともすると人間性を棄てることに2021/11/28
きゃれら
20
covid-19に対する恐怖で、我々はなぜ何より大切なはずの市民的自由を全く考えることなく手放してしまったのか。と、こういう言い方をできること自体がアガンベンさんを読んだ成果と言えるのだろう。最終章「恐怖とは何か」は、極めて重要なことが書かれていることだけはわかったけれど、6割くらいは難解で理解力が及ばなかったのが残念。ハイデガー「存在と時間」、ホッブス「リヴァイアサン」、それにアガンベン「ホモ・サケル」を読む必要がありそうだ。ウイルス恐怖に支配された真っ最中に、こういう意見を発表するのはすごい。2023/02/19
おおた
20
維新議員が全く逆の意で引用して訳者が指摘したことをきっかけに読む。本書は後書きから読むべき。本文は1年前のパンデミック前に書かれたため、その後の感染拡大と人々の対応から批判されうる内容になっている。一方でパンデミックを政治が利用し、法を棚上げにして自分たちの都合のいいように自由の制限を求める姿を批判。まさに変異株によって未曾有の感染拡大が予想される中、政府と一部富裕層がしゃかりきになって推進する某イベントのために、わたしたちの自由が制限されていること、そのものを指摘する。一読の価値ありです。2021/05/09
おっとー
10
移動もできず、死者を弔うこともできず、集まることもできない、そしてオンラインに従属し、剥き出しの生だけを守り続ける…ファシズムの時代ですら生じなかった人間管理を、コロナ禍はあっさりと実現してしまった。しかも宗教も資本主義も大学も、これに異を唱えることはしなかった。主権的権力は例外状態を利用し、継続させようとする。目の前の感染者数に一喜一憂し、移動や集会の制限の長期的影響を一顧だにしない近視眼的な人間がいかに多いことか。アガンベンはコロナ禍の人間管理を生権力の問題と捉え、これに反論した稀有な人文学者である。2021/11/01
mawaji
10
自由な移動を制限する措置は医療従事者からすれば感染の拡大を抑え病気で苦しんだり命を落とす可能性を低くすることに他ならないと思いますが、そこから政治的・哲学的な意味が生じてしまうということなのでしょうか。でも医学の常識に対しても「ほんとうにそれでいいのか」という問いはしつこくかけられて然るべきなのかもしれません。進化論的にとても弱い種であるホモ・サピエンスが言葉を話し群れを作ることで多くの種を絶滅に追いやり環境に負荷をかけている現状を考えると、コロナ以降の社会や人間関係がどうなっていくか気になるところです。2021/08/14
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