出版社内容情報
おもちゃに変身するゴミ、土に還るロボット、葬送されるクジラ、目に見えない微生物……
わたしたちが生きる世界は新品と廃棄物、生産と消費、生と死のあわいにある豊かさに満ち溢れている。歴史学、文学、生態学から在野の実践知までを横断する、〈食〉を思考するための新しい哲学。
内容説明
おもちゃに変身するゴミ、土に還るロボット、葬送されるクジラ、目に見えない微生物…。わたしたちが生きる世界は新品と廃棄物、生産と消費、生と死のあわいにある豊かさに満ち溢れている。歴史学、文学、生態学から在野の実践知までを横断する、“食”を思考するための新しい哲学。
目次
序章 生じつつ壊れる
第1章 “帝国”の形態―ネグリとハートの「腐敗」概念について
第2章 積み木の哲学―フレーベルの幼稚園について
第3章 人類の臨界―チャペックの未来小説について
第4章 屑拾いのマリア―法とくらしのはざまで
第5章 葬送の賑わい―生態学史のなかの「分解者」
第6章 修理の美学―つくろう、ほどく、ほどこす
終章 分解の饗宴
著者等紹介
藤原辰史[フジハラタツシ]
1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フム
37
雑誌『現代思想』に連載された「分解の哲学」全19回を軸に、足かけ7年にわたる「分解」を巡る思考がまとめられている。「構築」や「生成」ではなく「分解」や「腐敗」。そこにに潜む可能性。人も動物もこの世に生まれ落ちた瞬間から腐敗がはじまっていること。幼児の遊びである積み木は崩れる(分解)ことが前提であり、崩れた後にも創造性が内包されている。筆者の思考は面白いし、読んでいてすんなり頭に入ってくる。2021/06/22
パトラッシュ
16
カブラ、トラクター、給食と意外な補助線を引いて歴史を分析してきた著者が今回選んだのは「分解」だ。分解する国家や社会を描いた哲学者や作家、動植物の遺体、葬式、フンコロガシ、屑や残飯を拾って生きる最底辺の人びとの姿などを通じ、専門である思想史を論じていく。これまでの本よりやや難解だが、人の生き方や考え方に分解作用が大きな役割を果たしてきたことを明らかにしていく。こわれくずれたものをむすびつくる人の営み、使い捨てでなく修繕により社会が生まれ変わる「分解と再生」の可能性は、新たな変革のきっかけになるかもしれない。2019/09/13
やましん
13
人新生の資本論の著者のおすすめ本とのことで購入。「分解」をキーワードに現代社会が取りこぼした価値観を拾っていくのが前半。分解の哲学という書名に名前負けしない著者の本領が発揮されるのは、本書後半からで言語学を切り口とした時間概念の考察は、世界の捉え方を多面的にしてくれる。どちらかといえば脱成長論的な考えを持っている様にも見受けられるが、成長(=生産)することは、究極的な目的ではない(必要条件かもしれないが十分条件ではない)ことを、対概念の「分解」から浮き彫りにしてくれる、そんな1冊。2022/03/15
ネムル
13
五年に及ぶ連載において、分解の思考の近い射程に分解し得ないもの(原子炉)があったことは間違いなかろう。だが、その後も垂直思考的な優生思想による事件が起こり、また分解を巡り感染症が起こる。シームレスな水平思考へ誘う「分解の哲学」はネグリ&ハートやチャペックの作品から、より地に足つけた屑拾いや糞虫へと話が広がる。批評というよりどこかエセーのような書きぶりだが、ほんのちょっとした挿話(大地震以後の金継への注目や、他の人類学やアートへの波及)が豊かで面白いと思った。2020/08/04
mia-r
13
序章の掃除のおじさんから引き込まれて、ワクワクしながら読みました。面白かった。2020/04/07