出版社内容情報
フィッツジェラルドのマイノリティへのまなざし
『夜はやさし』に鳴り響く〈ジャズ〉の豊饒な小説世界
村上春樹『ノルウェイの森』やヘミングウェイ『エデンの園』との比較をとおして浮かびあがってくるものとは? そして、最高傑作『グレート・ギャツビー』に通底する世界とは? 哀しみと至福の文学体験へといざなう。
内容説明
フィッツジェラルドのマイノリティへのまなざし『夜はやさし』に鳴り響く“ジャズ”の豊饒な小説世界。村上春樹『ノルウェイの森』やヘミングウェイ『エデンの園』との比較をとおして浮かびあがってくるものとは?そして、最高傑作『グレート・ギャツビー』に通底する世界とは?哀しみと至福の文学体験へといざなう。
目次
序章 『ミッドナイト・イン・パリ』とジャズ・エイジ
第1章 フィッツジェラルドの苦悩と『夜はやさし』
第2章 『夜はやさし』とヘミングウェイの『エデンの園』
第3章 『夜はやさし』と村上春樹の『ノルウェイの森』
第4章 信仰告白の小説
第5章 感情的破綻
第6章 アメリカ人特有の思い上がりと傷つく人々
終章 終わらないジャズ・エイジ
著者等紹介
宮脇俊文[ミヤワキトシフミ]
1953(昭和28)年、神戸市生まれ。成蹊大学経済学部教授。専門はアメリカ文学、比較文学、ジャズ研究。日本F.スコット・フィッツジェラルド協会会長、ミネソタ大学客員教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
第一次大戦に米が参戦した1917年、黒人部隊の軍楽隊による演奏がパリに持ち込まれた。本国のような差別を受けず、黒人達が生き生きと演奏するパリのクラブにアメリカ人が押し寄せた1920年代~ジャズ・エイジ。パリでフレンチリビエラで、フィッツジェラルドやヘミングウェイは何をし、何を感じたか。それを『夜はやさし』から読み取る。時に『ギャツビー』や他のスコットの小品達を紹介しながら、お金の使い方に悩み散財し失っていったスコットについて、『夜はやさし』の味わい深さについて考察する。『夜はやさし』を再読したい。2019/05/18
choku70
0
フィッツジェラルド「夜はやさし」を読んだ直後だったので、気になって手に取る。村上春樹「ノルウェイの森」への「夜はやさし」の影響を著者なりに読み解いたところがなかなかに興味深かった。「夜はやさし」のニコルを二人に分けて、心を病んだニコルが直子、健康な時のニコルが緑だったのではないか、と。◆個人的には、「ディックはなぜこのように下降線をたどることになってしまったのだろうか。それは彼の視点が常に過去を向いていたからだ。」(p.92)の一節がささってきた。未来より過去を見がちと自戒しつ。2024/01/01
ばっは
0
『夜はやさし』を読まずに読んでも読めた。とりあえずオリジナル版を読んでみようと思う。「ジャズ」の定義が最後に語られている点は私がジャズ・ブラックミュージックに興味を持つようになった根本的な部分なのだろうと思う。村上春樹から能動的な読書体験が始まった私には『ノルウェイの森』との比較も楽しく読めた。2019/07/12