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出版社内容情報
死霊はどのように描かれてきたのか
日本では死者が骸骨となって墓場で酒宴を開く情景が古くから描かれてきた。また蘇生・転生することで新たな人生を迎えることがあり、さらに死後、鬼と化して人間に害をなす存在となることもあるとも信じられてきた。そうした考えは近代社会において科学的に否定されながらも、その一方で根強く息づき。今日、海外では例を見ない独自の形で継承され、進展している。本書では日本において死霊がどのように描かれてきたのかという問題を通史的に示して日本人の死生観について、文化的創造の歴史的側面から照射していく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
150
今まで蘇生という観点から幽霊について考えなかったが、死亡判定がいい加減な時代には埋葬後に甦る人もいただろう。生死の境はまさに生活に即した問いであり、そこから伊弉冉の話とか、ビジュアルに仏教と結びつく小町九相図や一休骸骨が出てきたというのも頷ける。古代から今に至る様々な創作物を俎上にのせ、屍という実体から生まれた表象として捉え直す手際は鮮やかだった。ロメロ映画を受容した下地にそうした親しい存在としての〈生ける屍〉があるなら、ゾンビの萌えキャラ化も不思議ではない。後半のサブカル論は眺めるだけで十分に愉しめた。2020/09/06
HANA
59
日本における古代から現代までの死霊観の変遷を追った一冊なのだが、前半と後半まるで趣が違う。前半は丹念に資料を紐解いていく学術的なものだが、後半はまさに趣味大爆発。映画から漫画、ラノベといったサブカルの中のゾンビが一挙に紹介されている。最近のものだと『カメラを止めるな』から某推理作品まで、まさに著者らのゾンビ愛が満ち満ちていて、こういうの大好き。しかし時代ごとに分類解説されているとロメロ『ゾンビ』の影響力の大きさが良くわかるな。最近のサブカルのゾンビを分析したものは他に無いと思えるので非常に面白かった。2019/06/29
ankowakoshian11
3
日本における死霊をめぐる表象史、文芸・絵画・演劇・映像の表現媒体でどのように描いてきたのかの歴史的な変遷と、死霊表象文化のひとつの派生形としてのゾンビについて。前半は古代〜近世にかけての死霊の表現の通史。幽霊譚、蘇生譚、歌舞伎、能などで描かれる幽霊・死霊の形。幽霊・骸骨・妖怪。後半は明治・大正・昭和編、幽霊(怪談)全盛期、ゾンビとサブカル。79年の映画『ゾンビ』が与えた影響。死霊表現の派生形と考えると蘇生譚がソンビに繋がるというのは成る程と納得。映画における幽霊の物理的表象の変化、巻末の年表も楽しい。2022/10/11
y
2
前半は丹念に文献を紐解いていて、後半は文学、映画、漫画作品の紹介と、かなり趣が違いましたが、どちらも読み応えがありました。が、欲を言えば、現代の死霊の捉え方の考察がもう少し深く知りたいなと思いました。2019/10/07
佑
2
懇意にしていただいている先生が上梓されました。古典文学知識がすっぽり抜けており難しい部分もありましたが勉強になりました。ホラーもゾンビも苦手ですが『アナと世界の終わり』は観てみようという気になりました。ちょっと興味が湧いてきたかも…2019/08/01