内容説明
あるドイツ文学者の、物語のようなホントウの話。最初で最後の自伝的回想録。
目次
1(38度線―戦争は儲かる;ネヴァーランド―「もはや“戦後”ではない」;「神様のノラクラ者」―ある猶予期間;「プラハの春」―才能の行方;赤い靴と白い靴―フラウ・ブロノルドのこと)
2(港の見える丘―小林太市郎のこと;東京地図帳―日本シリーズ第四戦;ビリヤードの球とトカゲの尻尾―諷刺の文学;中心と辺境―ウィーンの世紀末;メフィストの小旅行―東京大学;一人二役―翻訳について)
3(レニ会見記―「運命の星」について;G.グラス大いに語る―沈黙の罪;一日の王―山と川と海;「こんばんは、ゲーテさん」―『ファウスト』訳;海辺のカフカ―つとめを終えること)
著者等紹介
池内紀[イケウチオサム]
1940年、兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者・エッセイスト。主な著書に『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、『恩地孝四郎』(読売文学賞)など。訳書に『カフカ小説全集』(日本翻訳文化賞)、『ファウスト』(毎日出版文化賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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吟遊
12
池内紀さんの感傷に流れない、単なる個人史でない自叙伝。最後はエッセイ雑文のように。クラウス研究からの風刺好き、だったことはちゃんと知らなかった。2019/01/03
はなちゃん
0
自分史エッセイ。マイペースな生き方、中々真似は出来ません。急死された由、ご冥福をお祈りいたします。2018/11/05
parakeet_woman
0
「カフカ訳した人」の回想録。戦後の日本を生き、プラハの春を肌で感じ、全速力な経済回復と学生運動を目の当たりに…と言えばさぞかし波乱万丈な人生、と思うかもしれないが、本人はいたってマイペース。印象的なのは、ウィーン滞在中に辺境と自由について開眼し、終生のテーマを得たくだり。時代に沿って生きすぎると、大切なものを見落とすことがある。背を向けるわけではない、時代を横目に「一周遅れ」で走る。「おかげで、ほんのつかのま、ビリが先頭に立っているように見えたりします」。文学に携わる人はこうでなくちゃ、とも思う。2019/02/11