出版社内容情報
中村稔[ナカムラミノル]
内容説明
その生涯、思想と作品の全貌。悲痛な生涯の崖ふちに立って抱いた思想とその作品世界。詩作をはじめて70年余、鋭利な関心をもち続けてきた詩人が、斬新な視点から通説の多くを批判し、啄木の詩・短歌・評論・小説の現代的な意義を明晰に論述した、画期的、決定的な石川啄木論。
目次
第1部 生涯と思想(青春の挫折からの出発;北海道彷徨;悲壮な前進;絶望の淵から)
第2部 詩・短歌・小説・「ローマ字日記」(『あこがれ』『呼子と口笛』などについて;『一握の砂』『悲しき玩具』などについて;「天鵞絨」「我等の一団と彼」などについて;「ローマ字日記」について)
著者等紹介
中村稔[ナカムラミノル]
1927年、埼玉県大宮生まれ。詩人・弁護士。一高・東大法学部卒、『世代』同人。1950年、書肆ユリイカから詩集『無言歌』を処女出版。詩集『鵜原抄』(高村光太郎賞)、『羽虫の飛ぶ風景』(読売文学賞)、『浮泛漂蕩』(藤村記念歴程賞)、『言葉について』(現代詩人賞)、伝記『束の間の幻影銅版画家駒井哲郎の生涯』(読売文学賞)、自伝『私の昭和史』(朝日賞、毎日芸術賞、井上靖文化賞)ほか、著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetsuto
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啄木の母は南部藩士の娘。父の戸籍に入る前まで工藤姓だったから個人的に親近感が湧く。新渡戸稲造「武士道」の邦訳が出た頃の新聞評論に「あの武士道といふものも、古来の迷信家の苦行と共に世界中で最も性急な道徳であるとも言へば言へる」と書いたことから同郷の先輩を多少は意識していたと想像する。「頑迷な武士道論者」なんて言葉も使っていたりするが、自身を戦士と認識していて、決して自ら詩人や歌人だなどと称さなかった。誰もが感じている普遍的な心情をくみとり表現するのが詩であり、そういえ表現者を他人が詩人と呼ぶ。啄木は詩人だ。2017/08/10