内容説明
人もまた、一本の樹ではなかろうか 樹の自己主張が枝を張り出すように人のそれも、見えない枝を四方に張り出す。…(「樹」)生命を根底から捉える吉野作品世界の、ベスト・セレクション第2弾。
目次
1(樹木は;名付けようのない季節;六月;顔;六月 ほか)
2(花の生き方;闇と花;沈丁華の匂い;果実;種子 ほか)
著者等紹介
吉野弘[ヨシノヒロシ]
1926‐2014年。山形県酒田市生まれ。詩人。全国の小学校をはじめ、校歌も多数作詞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ
169
人は知らない。人は樹とともに生き、樹を育てさえしたのに。その行いは、花と木にとって僅かなこと。…青い冬空の下、冷たい安らぎが漂っているばかり。季節が余りに静かなので、雪を踏みしめる音を聞く。朽ちて土に帰ろうとしている枯葉が、この下にある。その土に未来の根を下ろそうとしているどんぐりの実は眠る。光る梢が揺れている。しかし、樹からの答えは未だ返ってこない。…あなたの感じた風を、私も感じているのかもしれない。あなたの輝きとて、あるとき疲れ、葉を落とし、眠りにつく。あの風景がなぜ今も、目に焼きついているのだろう。2022/02/11
けんとまん1007
19
花、木、植物、いのち・・・この星で共に生きている。いぞちあるものには、共通するものがあると思う。花、木を題材にしながらも、それは、自分自身にも繋がってくる。そんな空気感を感じる吉野さんの詩。穏やかな表現の中に、さりげなく、それでいてしっかりとしたものを感じるのは、詩の力。2017/06/17
遠い日
15
花や木、植物にちなんだ詩を編んだ吉野弘さんの詩集。物言わぬ植物に静かに滾る命を掬いとった表現のみごとさに圧倒される。非常に思索的な洞察や観察に基づくことばには説得力がある。木がお好きだったようで、「樹」や「樹木」「或る位置」などの詩には憧れや感嘆の気持ちが見える。長年住まわれた狭山市の大きな欅に対する言及には、愛さえ滲む。この人はやっぱり「命」の人だ。2015/09/08
双海(ふたみ)
13
また詩集を読み返したくなってきたし、花や木に会いに行きたくもなってきた。「のんびりする」ということをずっと忘れている気がする。2019/06/15
あお
3
吉野弘さんの詩集を読むといつも清々しい気持ちになる。吉野さんの著作でたくさんの植物の名前や言葉を知った。印象的だったのは以下の文章。私たち人間は見も知らぬ他人の力を借りて生きているという意識を欠いている。狭山市あたりは適度に都会に近く、自然もあり住むのにはとてもいいのではないかと思った。2015/12/10