内容説明
二人が睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい…日常生活のさまざまを凝視し、大きな感動を生む吉野作品世界からの、ベスト・セレクション。
目次
妻・喜美子が選ぶ(さよなら;奈々子に;身も心も ほか)
次女・万奈が選ぶ(謀叛;I was born;犬とサラリーマン ほか)
長女・奈々子が選ぶ(お茶の水・ニコライ堂;香水―グッド・ラック;みずすまし ほか)
著者等紹介
吉野弘[ヨシノヒロシ]
1926‐2014年。山形県酒田市生まれ。詩人。全国の小学校をはじめ、校歌も多数作詞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
167
艶やかな花の影に自らの清らかさは隠れてしまう。心身の健康と自分を愛する心を見失えば、敬うことさえできないと背中が教えてくれた。見えているようで見えない幸福がある。根や茎や葉に支えられて花は咲いている。正しさが人を傷つけることもある。過ちが正しさを生むこともある。生きるとは悲しいことなのだろうか。大粒の雨が降ればいつか雲の切れ間から光が射す。乾いたハンカチが夕陽に照らされて風に靡いている。人それぞれ置かれた場所で詩を手に取る。大切な方々との思い出に支えられ、今が在るという尊さに、それぞれの道は結ばれていく。2022/07/18
モリー
72
家族が選んだ詩で編まれていることに興味を惹かれました。家族へ愛情が注ぎ込まれていると感じられる詩が選ばれているように感じます。同時に、普段から接していた夫への、あるいは父への愛情や尊敬の念も感じられるのです。人間、吉野弘の魅力がギュッと詰まった詩集だと思います。2022/05/15
森の三時
36
吉野弘さんの詩にはじめて出会ったのは、たしか中学生だったか、教科書に載っていた「夕焼け」であったと思います。大人になってからも「奈々子に」や「祝婚歌」に触れ、優しい詩を書く方だと思っていました。この詩集は、妻と娘さんが選んだものだそうです。発表された詩たちは、作者の手を離れ、思いも寄らない人達に愛や慰めや勇気を与えて、受けとめた人の中で別の命を生きていますが、詩人の人間性を知る家族ならではの、愛着や郷愁があるとのことです。あとがきに長女奈々子さんの「奈々子に」に対する思いが記されていてじーんとしました。2019/05/18
けんとまん1007
30
ご家族が選ばれた吉野さんの詩。三人三様の選び方が、何とかなく伝わってくる。それでも共通するのは、吉野さんの詩自体の持っている力と、ご家族ならではものがあるからだと思う。何度読んでも、吉野さんの詩は、やさしい平易なことばで紡がれていながら、その奥行きや広がりを感じるのはなぜなのだろう。こころが穏やかになりながらも、希望が湧いてくる。2017/07/05
まいぽん
22
ことばが透明に身の内に届いて、すっと広がる感じ。久しぶりに詩を読んで思い出す感覚。吉野弘さんの奥さまと2人のお嬢さんが選んだ作品から編まれた詩集です。それぞれの選択から、夫を娘を、父を母を思う気持ちが伝わり感じ入ります。奈々子さんによるあとがきに挙げられた詩人20歳頃の「愛を人々の上に」という一編。20歳の吉野弘さんの中に既にあり、生涯を通して変わらずに守り、歌い続けられた歌のようなこの詩に、いつでも素直に向き合いたい。みんながこの歌に耳を傾けてほしい。2021/11/24