内容説明
基地の無電壕から連絡を受けた指揮所の中が騒然となる。「全機出撃!」待機所にいた搭乗員は愛機に向けて疾駆した。エンジンはすでに整備員によってかけられ、唸りをあげている。紫電改が邀撃のため次々に土埃を舞いあげて離陸していった。空中戦では相手より高度をとっていた方が有利に展開できる。紫電改の編隊は格好の位置についていた。これならいける。迷うことはない。「今日こそB29機を撃墜してやる」。特攻ではなく、祖国を守るために闘い抜いた感動の青春。
著者等紹介
松田十刻[マツダジュッコク]
1955年岩手県盛岡市生まれ。立教大学文学部卒業。新聞記者、団体職員、雑誌編集者などを経て小説を執筆
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感想・レビュー
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Machida Hiroshi
5
本書は、戦争末期の旧日本海軍で最高の戦闘機と言われ今も人気のある紫電改を主装備とし、熟練操縦士を集めた、本土防衛のための伝説の精鋭部隊・三四三航空隊に実在した撃墜王・菅野直を主人公にした戦記小説です。小説なので当然脚色されているでしょうが、実際の菅野氏も豪放磊落で上には強く下には優しい魅力的な男だったようです。小説なのでスラスラと読めて、しかも戦時中の飛行機乗り達の青春が目の前にくっきりと立ち上るような気がしました。今後も、若くして死なねばならなかった男たちの意気と悲哀を胸に感じて生きて行こうと思います。2017/04/11
ばな
2
小説として面白くする意図のフィクションをあまり入れず、史実に忠実に沿いながら著者の思いを登場人物に仮託して仕上げている様です。私もあまり知られていない紫電隊のことを勉強させていただくつもりで読みました。紫電隊や剣部隊は航空エリートですが、彼らの同期の多くは特攻隊にしたてられています。当時の彼らの思いを想像すると切ないです。2011/05/21
おこめ
1
史実であるもフィクション。少なくとも散って行った戦闘機乗りたちの心情は事実として残りようがない。理解しながらも菅野直に魅了される。2013/09/07