内容説明
さまざまな詩の魅力について語り、自作詩の舞台裏に読者を案内する。単なる作詩法・技術論を超えて、詩的感動の原点は何かを語ろうとする、第一級の現代詩入門。詩が分からないという人のための、待望の復刊。
目次
馬・言葉ほか
豊かにする
他者・欠如
ぶつかる
漢字喜遊曲
『神曲』地獄篇から
シェイクスピアの『ソネット詩集』から
リルケの詩から
嵯峨信之の詩から
茸の背丈〔ほか〕
著者等紹介
吉野弘[ヨシノヒロシ]
1926‐2014年。山形県酒田市生まれ。詩人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いっち
30
著者は子どもの詩のコンクールの審査をしていたが、似たり寄ったりでつまらない詩が多かったと言う。例えば「おかあさん」を題材にした詩は、次に当てはまるのばかりだそう。①なんでもできる魔法使い(洗濯・掃除・裁縫)。②手が荒れている、手が温かい。③白髪が増えた、皺が増えた(心配をかけてるせいか)。④いいにおいがする(石鹸、味噌)。⑤口うるさいが自分のことを思ってのことだから感謝。⑥その他(体形、体重、声、長電話、化粧、内職)。受賞した詩(おかあさんとおじいさんのけんか)には、他にはない個人的なエピソードがあった。2022/08/13
かふ
18
詩の創作のヒント(エッセイ→詩)から詩の鑑賞(シェイクスピア、リルケ)、そして詩の添削(余計なお節介と書きながら)までしてしまう入門書。詩に興味があったり、書いてみたいと思う人はいい入門書だと思う。こういう詩の入門書は珍しいかもしれない。https://note.com/aoyadokari/n/n638ec4c40e322024/01/02
わんにゃん
9
タイトルに裏切られすぎた(笑)そこは是非変えていただきたい…。個人的には若い母親と子供の話が面白かった。「私の考えだが、人間というものは救いがたいものであればあるほど、そのままそっくりを何者かによって肯定され愛されることが必要なのではないか。仕様がない欠陥だらけのままを愛されてこそ、人は、その欠陥に耐え、同時に他の人の欠点に対しても寛容になることができるのではあるまいか。」2022/05/10
まおまお
5
日常にあるありふれた生命に寄り添う視線を感じました。当たり前にあることを今立っている場所から少し変えて捉え直すことを自発的に出来ることが大切ですね。加えて、生野幸吉さんの「パラレクシア(錯字症)もアナグラム(綴り変え)も詩人の素質の一つ」という言葉も気に入りました。2017/02/09
plum
5
「吉野さんは矛盾や不協和音にぶつかると,なぜ,と思い,詩を書く動機が生まれるようです」と34年前に本を編集担当した人の解説があった(深い和音,高橋順子)。「生命は」の欠如とか,世界は他者の総和。推敲や添削にみられるこだわり。応募された子どもの詩に,言葉は,言葉を必要とする人,その人のものであると心を寄せる,この姿勢。NHKクローズアップ(“いまを生きる”言葉 ~詩人・吉野弘の世界~)。2015/02/05