内容説明
なにもかもが互いの境界や領分を失念したかのように交錯し、混ざりあう、奇妙な小世界。注目の気鋭による掌篇連作全60話。
目次
天香国色
恨み雛
雨月
雨の日の帰宅
蓮詣で
西瓜
踏鞴法師
大根婆
空蝉の人
珍果〔ほか〕
著者等紹介
田辺青蛙[タナベセイア]
大阪府生まれ。2006年「薫糖」でデビュー。2008年「生き屏風」で第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。独特の単語選択から生まれる幻想的な作風は高い評価を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
62
発想に酔いしれる戯れの情緒的怪談掌編だが、そのファンタジックな着想は嫌いではない。子供の様に残酷で化け物の様に気まぐれだが、その薄い物語が重なることで逆しまに生臭い血の色が桜色に淡く掠れていくような印象の反転で記憶をすり抜けていく…「何がよかったの?」大きなカミキリムシが二匹、作者の気持ちを代弁する。「何がよかったのだろうか?」物語が僅かに余韻を残して消えていった。2020/09/05
里愛乍
37
一作にして1〜3ページ、小さく妖しく時には可愛らしくやっぱり不気味な掌編連作全60話。鬼や河童、幽霊・妖怪・宇宙人や吸血鬼。自然に当たり前のように存在し、こちら側と袖擦り合う。雨や土の匂いがするような、懐かしい感覚をも体験できた。2020/08/24
らむり
35
ホラー大賞受賞作家なので、わくわくしながら手に取りました。なんだろ、不思議ちゃん系ホラー??なんとなく藤野可織さんに近い世界観でした。結構好きな作風です。2014/03/19
いたろう
34
それぞれ1~3ページの断章を集めたような怪異譚集。内容は怪談めいて、ユーモラスで、ナンセンスで、シュールで、奇妙な、ファンタジー。河童や鬼など、日本古来の物の怪も登場しながら、話はからっとして現代風。これら掌篇に表紙画のようなグロかわの絵がついて、絵本になったら更に楽しそう。2014/03/09
かっぱ
22
図書館へ行く前に何か軽く読める積読本がないかと思い手にして読了。この本のタイトルである「あめだま」はきっと赤色だろうと想像する。宝石のルビーのように美しいけれども、それは血の色でもあって、光の当たり具合によっては、赤黒くも見える。そんなホラーな短編集でした。2014/04/27