内容説明
あらゆる場所にヴォイド=空虚はぽっかりと存在し、私たちをあやしくも魅惑しつづけている。彫刻、建築、メディアをめぐって、世界的に活躍する写真家にして著述家の「なにもない空間」を求める旅がはじまる。
目次
核と骨
ヴァニタスの部屋
くびれた世界
心が凹むとき
大地の彫刻家
ミクロの間
風の櫛
多孔体と建築
机上の空‐論
隠れん坊の時間
空虚の発明
空虚の照準
空で出会う
著者等紹介
港千尋[ミナトチヒロ]
1960年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年には第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館コミッショナー、2012年には台北ビエンナーレの協同キュレーションを務めるなど、写真、美術、現代思想を横断し幅広く活躍。写真展「市民の色chromatic citizen」で第31回伊奈信男賞受賞。写真集に『文字の母たち』(インスクリプト)『掌の縄文』(羽鳥書店)、著書に『考える皮膚』(青土社)、『記憶』(講談社選書メチエ、サントリー学芸賞)、『書物の変』(せりか書房)、『芸術回帰論』(平凡社新書)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
3
美術における空虚-ヴォイド的なるものをめぐるエッセイ。作品があるのならそれを取り巻く空間もあり、あるいは虚の空間自体を作品として成り立つ場合すらある。ヴォイドは単に空虚を超えてそこに未分の何かが孕まれる場所であって、多義的な未来に開かれている。彫刻や建築の分野ではこうした空間の認識は普通なのだと思うが自分はあまり意識したことがなかった。美術・インスタレーションに留まらず、ダーウィン(彫刻家としてのミミズ!)や心理まで広い領域をヴォイドに引きつける手際はなかなかにスリリング。2014/09/19
鳩羽
2
彫刻や絵画や建築にあらわれるヴォイド(空間、空虚)を、自由に、けれど連鎖的に巡っていくような思索の旅。空間が在るとか無いとか、形而上の境界線とか容器だとか考えると訳が分からなくなりそうだが、実際表現された芸術はそれらを引っくるめて表現し、存在しているのかなと思った。人間の視点をミクロからマクロに変えたり、時間の経過を見せたり、中にはいって体験することができるものもある。芸術作品を鑑賞するということに縁がないので、そういうふうに鑑賞したりもするのかなるほどと感心した。2013/02/20
astrokt2
0
未レビュー2012/11/23