内容説明
昭和日本最大の思想的事件日本的学知の頂点にそびえる和辻哲郎畢生の代表作『倫理学』。昭和の戦争をまたいで刊行されたこの大著に、いかなる思想的事件がはらまれていたのか?敗戦後ほどこされた「修正」を検証し浮かびあがってきた刻印とは?西欧近代に渾身で応答しようとした思想的営為の栄光と挫折を、われらの課題として批判的に読み解く。
目次
なぜいま和辻倫理学なのか―和辻倫理学と昭和の刻印
和辻は倫理学を作り直す―既知の倫理学とは何か
マルクスからの始まり―和辻倫理学の隠された出発
昭和のわれわれの倫理学へ―和辻倫理学の再出発
「倫理」という言葉と解釈学―和辻におけるハイデガー
人の肉体は物体化・個別化されるか―個人殺しの物語
人間共同体という倫理学の語り―和辻におけるヘーゲルとは何か
なぜ二人共同体から始まるのか―「公共性の欠如態」としての共同体
経済社会をどう読み直すか―トロブリアンド島からの視点
和辻に「市民社会」はない「町人根性」と資本主義の精神
「民族」を語り出すこと―和辻における「偶像」の再興
文化共同体としての民族とは―“文化”を“民族”で語ってしまうこと
死ぬことができる「国家」の提示―和辻はここで終えねばならなかった
国破れて山河はあるか―和辻国家論の戦後
和『倫理学』はいかに完結したか―和辻倫理学の戦後
著者等紹介
子安宣邦[コヤスノブクニ]
日本思想史。1993年川崎生まれ。東京大学文学部卒業、東京大学大学院博士課程(倫理学)修了。大阪大学名誉教授。日本思想史学会元会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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