出版社内容情報
多くの物理学者がスーパーストリング「理論」とよんでいるものは、そもそも理論ではないことを説明する。
内容説明
現代物理学最大の主流派であるスーパーストリング理論。提唱から二十年以上たっても一つの物証もなく、検証可能な予測をたてることすらできないこの理論は、間違ってさえいない!数学との関係を中心に素粒子物理学の歴史をたどりなおし、使えない理論を見限って新たな展開を呼びかける、科学界話題の論争の書。
目次
千年紀末の素粒子物理学
生産用具
量子論
量子場の理論
ゲージ対称性とゲージ理論
標準モデル
標準モデルの勝利
標準モデルの問題点
標準モデルの先
量子場の理論と数学における新しい見通し
ストリング理論―歴史
ストリング理論と超対称―評価
美しさと難しさ
スーパーストリング理論は科学か
ボグダノフ事件
他にゲームをやっていない―ストリング理論の威力と栄光
他の見方
結論
著者等紹介
ウォイト,ピーター[ウォイト,ピーター][Woit,Peter]
1979年ハーバード大学卒、85年プリンストン大学で理論物理学博士号。現在、ニューヨーク市のコロンビア大学で数学の講師を勤める。ブログNot Even Wrongが有名
松浦俊輔[マツウラシュンスケ]
名古屋工業大学助教授を経て翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Hirotsugu Fujii
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理論物理を勉強した事のある方、特に素粒子論の素養のある人には興味深い本。肯定的なことばかり書いてある啓発本よりも研究を進める上での判断や社会的環境の影響が参考になる。式や図の一切無い本文なので、素養のない理論物理初心者が読むのは無理です。。。苦労したけれど、面白かった。2017/02/19
御光堂
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理論物理学を修めた数学者によるストリング理論(超弦理論、超ひも理論)の批判。一般読者向けに数式は避けられているが難解な概念が次々と出てくる。ストリング理論は実際には理論ではなく理論が存在するという期待の集合に過ぎず、実験的に検証できる予測を何も出せずにいる科学として失敗した理論だという。にもかかわらずストリング理論が理論物理学界で主流になり権威のようになってしまっている現状を憂いている。加速器の発達の話や、素粒子物理学での対称性や群論の重要性の話など、素粒子物理学発展史としても味深かった。
しゅん
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素粒子を齧った人間にとっては一服の清涼剤になるんではないかと思う。ロジック自体オーソドックスで間違ってはいないし、端的に記載している部分も評価できる。かのアーベルの論文を表に出した査読者の言葉「我々数学者は数学の範囲を規定すべきではないのではないか」。果たしてスーパーストリングを科学の規定に入れるべきかどうかは、科学の実証主義の根底とは別に議論されるべきではないだろうかと思う。少なくとも数学には入れられるでしょ。
denbe
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うちの素粒子の先生たちは「トンデモ本」とみなしてたけど(笑)言ってることはとってもまとも2011/06/14
しろくまZ
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批判的立場からストリング理論を述べた本。ストリング理論以外の素粒子論についても概説している。レベル的にはかなり高く、歴史的背景も含めて理解しようとすると、大学院M1程度の知識が必要だと思われる。物理理論でなく、又、数学でさえない「究極理論の万年候補」のストリング理論。素粒子論専攻の学生さん達なら、どんな感想をもつのだろう?それでもストリング理論を研究するのであろうか?2010/08/04