内容説明
トロヤ戦争下、全軍の使命をになう少年戦士は、非業の英雄ピロクテテスと相対峙する―。国家の命運と個人の尊厳の間の葛藤と、若者の成長を描く隠れた傑作。清新な訳文による全訳と解説によって豊穣な古典世界が甦る。
目次
序章 ソポクレス『ピロクテテス』とトロヤ(『ピロクテテス』とトロヤ圏叙事詩;トロヤ戦争を起こしたゼウスの計画;パリスの審判からイピゲネイアの犠牲まで;ピロクテテスの置き去りとパラメデスの処刑 ほか)
本論 ソポクレス『ピロクテテス』を読む(オデュッセウスの策謀と詭弁;ピロクテテスとアキレウスの息子の出会い;アキレウスの形見の武具についての作り話;船に乗せ連れて行くという約束 ほか)
著者等紹介
吉田敦彦[ヨシダアツヒコ]
1934年生まれ。東京大学大学院文学部西洋古典学専攻課程修了。フランス国立科学研究所研究員。学習院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フクロウ
2
帯に言うように「国家の命運と個人の尊厳の間の葛藤」を描く作品である。業病を発し、儀礼や軍事作戦を発作と奇声で台無しにするため、アカイア軍から無人島に置き去りにされたピロクテテス。しかし、トロヤ攻略の鍵はピロクテテスと弓にあるという。かつて切り捨てたピロクテテスを、呼び戻すために必要なことは何か。オデュッセウスに唆されピロクテテスを騙し首尾よく弓を取り上げたネオプトレモスは、なぜ反転してピロクテテスに弓を返すのか。2024/02/26
刳森伸一
2
ソポクレスの悲劇『ピロクテテス』を英雄アキレスの子供ネオプトレモスの成長譚と捉え、懇切丁寧に解説していく。悲劇の背景だけでなく、全訳を載せつつ、その都度解説を加えていくので非常に分かりやすいのだが、その一方で完全に作者の解釈に従わざるを得ず、文学作品として味わうことは難しい。2016/11/22