内容説明
『ジェンダー・トラブル』で、バトラーはアイデンティティの理解に革命をもたらした。性、セクシュアリティ、ジェンダー、言語、主体をめぐる概念の終わりなき戦略とは?バトラーの理論と格闘するための最良の入門書。
目次
第1章 主体(コンテクスト;主要な思想潮流 ほか)
第2章 ジェンダー(現象学から「女性性」へ;このテクスト(のどこ)に主体は存在するのか ほか)
第3章 セックス(物質という問題;身体と言説 ほか)
第4章 言語(問題の所在;傷つける言葉、束縛する言葉 ほか)
第5章 精神(コンテクスト;権力と精神 ほか)
著者等紹介
サリー,サラ[サリー,サラ][Salih,Sara]
英国ケント大学カンタベリー校講師を経て、現在カナダのトロント大学英文科助教授
竹村和子[タケムラカズコ]
お茶の水女子大学大学院教授。専攻は批評理論、英語圏文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
12
学術論文の中で最も嘆かわしい悪筆ナンバーワンという栄誉に選ばれただけあって非常に難解な思想家を、その理論の源泉と議論の文脈から丁寧に解説。ジェンダー及び性が社会的構築物にすぎないとの有名な主張にも触れる一方で、フロイトのメランコリー論や『自我とエス』を参照して異性愛よりも根源的な同性愛を強調する『ジェンダー・トラブル』が同時にそれとは矛盾する議論を展開してる点に注意を向けたり、デリダやフーコーやラカンが詳しい説明なく導入されたりと非常に濃い内容。圧縮された本人の思想を解凍するだけでもいかに大変かが分かる。2015/10/10
takizawa
4
「1999年,学術誌『哲学と文学』は,毎年恒例の「学術図書や論文のなかで文体上もっとも嘆かわしい文章」コンテストにおいて,投票の結果,バトラーを「悪筆」ナンバーワンに選出した」(p.32)ことが示すように,バトラーは,「一読難解,二読不可解」「誤読の女王」と評される。しかしバトラーの文体自体が政治的戦略であって,読者は,難解で手のかかるテクストを読むことによって,現在の「常識」に対し批判的な態度をとれるようになる。こう言ってもらえるだけで,バトラーを読んでいるときの不安が少しは軽減されるんじゃないかなw2009/12/17
あまん
3
ジュディス・バトラーの著作の文章が晦渋であるのは、その文章自体がパフォーマティヴィティを持っており、読者が解読を迫られるためであるようだ。それに加えて、ヘーゲルやフーコー 、デルダ、アルチュセール、ラカン、イリガライ等々の思想を取り込み、述べようとすることを多方面から構築しているためだ。バトラーに対して膨大な批判がなされた。しかし、それは彼女の言説が優れていることの証拠にもなる。一方で、彼女は大いに批判を望んでいるのだが。2022/01/08
時田桜
3
1ヶ月かけて読了。難しかったので少しずつ読んだが、自分の中に燻っていた問いを、少し明確にしてくれた気がする。思想系は読み進めるのは難しいけれど、かなり濃い一冊になる気がする。2020/01/18
べ
1
ジェンダートラブル「主体が形而上的な旅をする先在的存在だという前提からは出発せず、主体はむしろ進行中の過程にあって、それがおこなう行為によって言説のなかで光一腐れる」82 監獄の誕生→ジェンダートラブル3章「ジェンダーに「内部」などないから、「禁止の法」は内面化不可能であり、バトラー呼ぶところの「ジェンダーの身体的な様式化──身体を空想によって空想的に形象すること」をつうじて、身体のうえに書き込まれる」1172022/12/20