内容説明
『オリエンタリズム』で現代の批評理論の様相を一変させたポストコロニアル研究の巨星サイード。パレスチナの窮状を全世界に示し、植民地以降の世界のアイデンティティ形成に勇気を与えた、その仕事の核心とはなにか。権力に対して真実を語り続けた知識人の全貌。
目次
なぜサイードか?
第1章 世俗世界性―テクスト
第2章 世俗世界性―批評家
第3章 オリエンタリズム
第4章 文化としての帝国主義
第5章 パレスチナ
サイード以後
著者等紹介
アシュクロフト,ビル[アシュクロフト,ビル][Ashcroft,Bill]
1946年生まれ。現在、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ大学教授。専攻は英文学・ポストコロニアル研究
アルワリア,パル[アルワリア,パル][Ahluwalia,Pal]
1959年生まれ。現在、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ教授。専攻は政治学。ポストコロニアル研究の分野で幅広い著書がある
大橋洋一[オオハシヨウイチ]
1953年生まれ。東京大学大学院および文学部教授。専攻は英米文学、批評理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
35
著者が外国語話者ということで、翻訳や文脈の共有がなされないことにより、より難解になってしまっているかが気になる。翻訳の問題は無い、文脈の問題は読者によるというところだろうか。解説本を読む一連の作業は、サイードの本、本書、本書の要約と編み込まれたテクストから生み出された権力関係を明確にしようとする、世俗世界性を大事にしたサイードの仕事と逆行しているというのは読んでみてはじめて分かる。5章立てで各章の終わりに枠で囲った要約がある。この要約がまた良く出来ており、さらに文章を読まない方向に文章を読んで行っている。2025/05/21
ア
6
エドワード・サイードについての入門的な解説書(翻訳)。世俗世界性、オリエンタリズム、文化としての帝国主義、パレスチナを主たるキーワードとして、サイードの思想を解説する。文献案内も充実。 パレスチナやアラブ人についてのサイードの言説が、今も大いに当てはまる部分があり、驚かされた。訳者曰く「パレスチナ問題に、西洋の近代とともにあった植民地帝国主義の矛盾が集約されて顕在化しているとすれば、パレスチナ問題が解決しない限り、20世紀は未完だし、近代そのものも未完なのである。」2025/03/11
tieckP(ティークP)
3
今さらサイード? という気もする。たしかに、サイード=「オリエンタリズム」=ポスコロは、いまやある種の常識のレベルまで浸透しており、また秘術的な思想のたぐいでもないから、解説書は不要である(容易に理解できて、かつ影響を与える発想こそは、秘術的な思想よりも価値あるものに違いないのは確かだが)。とはいえ、個人的にはアマチュアリズムや世俗批評の擁護者としてサイードは評価されるべきだと考えるし、対位法的読解など、他にもサイードから学ぶことはあるように思う。なお訳者は、ことサイードに限れば信頼できる人であると思う。2012/04/13
本を読む日々
1
各章の要約があるのは親切です。でも用語集があるとよいのになあ…。2014/01/13
Ecriture
1
オリエンタリズムを超えて。でもサイード自身文化の色眼鏡無しにはモノを見れないんだけどね。2008/04/30