内容説明
ブエノスアイレスから愛をこめて―。ラテンアメリカ文学界の頂点に立つ売れっ子作家プイグが、最晩年に執筆した、知られざる幻の小説。映画に触発された7つの愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロピケ
5
アルゼンチンでイタリア?と思ったけれど、『母を訪ねて三千里』をすっかり忘れてた。イタリアの古い映画のビデオテープがアルゼンチンやアメリカに渡って行くのを想像すると心が温かくなるようだ。取り上げられている作品は見たこと無い映画ばかりだけれど、一度見てみたいと思わされるものばかり。イタリアと言ったら、てっきりソフィア・ローレンかと考えたが、魅力的な女優さんが彼女以前にも沢山いたし、その魅力をプイグは倍増して語っているので(といっても、エッセイでは無いです)。登場する女優さんは女優冥利に尽きるんじゃないかな?2013/01/02
かふ
4
プイグはイタリア(ローマ実験センター)で映画を学んだのでイタリア映画が多い。それも女優達。会話体や手紙だったりでそれを隣で聞いている感じ。「迷うけれどロッセリーニを選ぶ」ではうんうん頷いたり、「そう、女神みたいにきれいだった」ではシルヴァーナ・マンガンの映画を観たくなったり。脚注の映画解説が詳しく面白いです。2013/01/05
hiro
3
少年の頃母親に連れられていくつも見たアメリカのハリウッド映画に魅せられたからかプイグはブエノスアイレスの大学を出た後、映画の勉強の為にイタリアへ留学、その後デ・シーカ、ルネ・クレマンなどの下で映画監督の道を歩み始めるが、文学へと転向。その後、シナリオスタイルを駆使した特異な文体でラテンアメリカ文学の騎手の一人となる・・・この本はイタリアの雑誌向けに書かれたシリーズ短編を集めたプイグの遺作。文学へと転向しても映画を愛し続けたことがよく判る本・・・2020/04/05
のうみそしる
2
古き良きイタリア映画や女優、監督について登場人物たちが話を繰り広げる。会話文から彼らの関係や信条などが淡く浮かび上がる。映画はその媒体。「わたしの目が最後に見るものが、あなたの顔であればいい。この瞬間に死んでしまいたい」クラシック映画が見たくなる。ロロブリジダ。2019/03/20
pon
2
プイグの遺作。イタリア映画をテーマにした短編集。いつもどおり手紙や会話などレベルの異なるテクストが混じっている。各短編の後にその短編で取り上げられた映画の解説が置かれているのだが、『蜘蛛女のキス』のように解説まで作品に含むのかと思い、そのつもりで読んだところ、親切な訳者による解説であった。あと、解説に本書はイタリア語で書かれたとあり驚いた。訳者はタブッキの『黒い天使』を訳した方だった。プイグは若い頃ローマで映画を学んだというから、イタリア語もできたのでしょう。2015/05/06