内容説明
伝説とその遺産。偏見と差別のドラマツルギー。ホロコーストの後、シャイロックはいかに語られるべきか。生肉一ポンドへの執着という契約通りの要求が、狡滑で残忍、悪辣で卑劣という見做されるに至るメカニズムは何か。人種問題・宗教・精神分析・文学・演劇など、四百年の長きにわたって蓄積された言説を多角的に検討し、「シャイロック問題」の核心に迫る―。ロイアル・ソサエティ文学賞、ヨークシャー・ポスト・ブック賞受賞。
目次
第1部 シェークスピアのシャイロック(彼はどこから?;ユダヤ人;三千ダカット ほか)
第2部 解釈―1660‐1939(喜劇から悲劇へ;ロマン派と修正主義者;ヘンリー・アーヴィング ほか)
第3部 世界のシャイロック(伝説と遺産;他者の声、他者の文化;大家族 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マカロニ マカロン
7
個人の感想です:B+。世界中でドン・キホーテ、ロビンソン・クルーソー、ホームズらと匹敵する知名度だろうシャイロックだが、18~19世紀には『ヴェニスの商人』は殆ど上演されることはなかった。19世紀末にロシアのスタニスラフスキーの手で上演されたが大衆受けしなかった。シャイロックはマルクスによって市場経済、ブラック企業の経営者、資本家のアイコンとされた。反ユダヤ主義者にとって格好の標的となり、ナチス政権下のドイツでは盛んに上演された。現代でもこの傑作劇に底流する反ユダヤ精神をどう取り扱うか試行錯誤が続いている2022/08/19
figaro
2
シェイクスピアの日本語訳はどうやら「ヴェニスの商人」が最初らしい。シャイロックは、おそらく一番有名なユダヤ人からもしれない。その中世ヨーロッパからエリザベス朝にかけての不存在、イエスの血の責任を子孫が被るというキリスト教的な発想、富を美徳としつつ金融を忌まわしいものと捉える中世的な価値観、これらがシャイロック像を作り上げる。「稲妻の光でシェークスピアを読む」と称えられたキーンの演技見てみたかった。2015/12/05
viola
0
ひたすらシャイロックについて書かれた本。前半はかなり興味深い内容ですが、後半にいくに従い・・・・どうしちゃったの!?と突っ込みたくなりました。2009/06/17