内容説明
没後百年をはさんで長足の進歩を遂げたランボー学の成果を背景に、「語による驚異の創出」と「みずからを他に変える企図」というランボー詩の二つの原理を明らかにし、そこに刻印された亀裂を浮き彫りにする。世界のランボー学の最先端にいる著者の日本語による初の著作。
目次
1 アニミスム ディナミスム―「酔いしれた船」の修辞
2 小さな造物主―転移と反‐転移
3 魔女 吸血鬼 精霊―形象化とアレゴリー
4 水の記憶―連想と開示の詩学
5 もうひとつの至高性―パロディと創造
6 「狂気」のしるしのもとに
7 驚異のオペラ
8 我慢の祭
9 自作の演出
10 終わりを書くこと書くことの終わり
補遺(1)『地獄の一季節』「錯乱2 言葉の錬金術」
補遺(2)『地獄の一季節』「錯乱2 言葉の錬金術」反故草稿
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nranjen
3
実を言うとランボーの詩を読んだことはほとんどない(授業プリントで触れられていたのを目にした程度)が、このような面白い世界があったなんて!と、この本を読んで開眼した気がする。ランボーの繰り出す言葉の豊かな世界が、ポイントポイントでわかりやすく整理されて説明されている。いくつか気になる詩もあった。読んでみたい。2017/07/20
Skel_san
0
ランボーのイロニー=批評的自己意識を詩の一言一句から浮かび上がらせる試み。徹底して密着した分析だなという印象、もっと早く出会いたかった。予備知識や何らかの図式がなくとも、鋭い人はシンタックスへの着目のみでここまで読めるんだろうなと思ったし、自分の読解力のなさが恥ずかしくなる。2016/12/03