内容説明
フロイトへの回帰を唱え、精神分析学のみならず現代の人文諸科学に多大な影響を与えつづけるジャック・ラカン。「ローマ講演」「文字という審級」「アンコール」など、ラカン思想の流れの結節点にある重要な著作を丹念に読解し、その核心を簡潔かつ平易に説き明かす。
目次
1 初期の著作
2 「鏡像段階」
3 「現実原則の彼岸」
4 ローマ講演
5 「盗まれた手紙」
6 「文字(手紙)という審級」
7 エディプス・コンプレックス
8 精神病
9 「主体の転覆」
10 『アンコール』
11 要約と最近の発展
補遺(関係のある言語学概念の略図;ラカンの略歴)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなた
5
ラカンの概説はわかりにくくかつ投げ出したいものが多いが本書は要領よくわかりやすくまとまっている。読んでいても『エクリ』のようなストレスがない。ちなみに樫村愛子なんかもラカンのわかりやすい補助線をひいてくれる。斎藤環のラカンはわかりやすすぎるように感じたし、ジジェクなんかはジジェクの波にのらないと結局、ジジェクもラカンもようわからんという感じになる。 2010/07/24
ハンギ
0
原著はラカン死後数年でイギリスで出版された本だそうだ。94年翻訳出版。ラカン死後、精神分析のグループは分裂し、おそらく日本にも影響が出るくらい。イギリスは精神分析学は一つの系統しかないようで、盤石に見えるが、それは学際的な分野を軽視しているためでもあるのでは、と著者は警鐘を鳴らしている。ラカンの精神分析の姿勢、言語との関わりなど勉強になった。主な切り口は、当時の精神分析への不満を述べた「ローマ講演」を中心に据えた解釈で、ラカンはフロイトに忠実であるがゆえに過激な反体制派になったのだというもの。2014/02/10