内容説明
神殿やピラミッドや岩窟墓は、古代エジプトの宇宙観を物語る巨大な記念碑である。そこに描かれる神々の誕生、宇宙創成、神聖動物、太陽崇拝、復活信仰などの神話は、人類の宗教や文化に、はかり知れぬ影響を与えた。人類最古の文明の基層をなす、古代エジプト人の神話世界。
目次
1 信仰と神々
2 世界の創造(ヘリオポリスの宇宙創成説;メンフィスの宇宙創成説;ヘルモポリスの宇宙創成説;テーベの宇宙創成説;他の宇宙創成に関する観念)
3 神々(「最初の時」の神々;ファラオと王国の守護神;創造と豊穣と生誕の神々;死の神々;神格化された人間と神聖ファラオ;神聖動物)
4 死後の生活―オリシス崇拝の普及(オリシス崇拝のはじまり;死者の王としてのオリシス;復活のシンボルとしてのオリシス;防腐処置と埋葬儀礼;死者の審判;オリシス崇拝の後代の発展)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
3
エジプト神話は、多神的であり、しかも、各神における信仰センター(ここではノモスとする)よって、主神格が違っていた、約5千年以上のわたるエジプト王朝文化に合って、その時々の王朝によって主神格が変遷していくなかで、神話自体も複雑な習合・離散を繰り返し、現在に至る。よって統一見解とも云うべき神話存在せず、極めて混乱した煩雑さをもった神話であろう。2014/09/12
skia
3
学術的な考察まで踏み込んでいるわけではないのに、やけに読みづらかった。エジプト神話というものが、ギリシア神話ほど物語として完成されているわけではないということ、時代・地域・身分によって信仰されている神々が異なり神々の特徴や象徴も変わることなどが、複雑になっている主な理由だろう。ただ、文章自体も、原文の問題か翻訳のせいかはわからないが、よくわからない記述がときおり見られた。翻訳も原文の文構造が容易に想像できるようないかにもな翻訳文体でもうちょっとこなれてほしかった。写真が多く使われていたのは良かった。2010/09/17
しいかあ
3
ギリシア神話みたいなのを期待していたら見事に足元をすくわれた。エジプトの信仰は常に変化を続ける生きた信仰だったらしい。民衆に支持されるオシリス系と公的な崇拝の対象である太陽系の2系統の神々の存在は、日本の国津神と天津神を思い起こさせる。というか、いろんな神様がぐっちゃぐっちゃに混じりあっててわけわからん。何このリアルメガテン状態。太陽神だけで何柱いるんだよう。2009/11/09
じゃくお
1
エジプト神話には確立された神話体系が存在せず、時代や政治的な要因によって信仰が変容することが激しい。おそらくエジプト人が他者の信仰に寛容であって、異なる神々を吸収してしまう土壌が存在した所以なのでしょう。気になった点としては、エジプト神話が生と死の二項対立について考究した思想体系であり、それがオアシスと砂漠で具象化されている点です。やはり人間の思想を育む上で、地理的要因を無視することはできないのだと感じます。2023/02/04
うづき
1
キリスト教への影響も強く見られる。何千年とあるのだから、その歴史の中で神話が変化していったのは当り前のことだろうけど、それは他の神話や宗教にも云えることですよね。神話というより歴史よりの筋になっていて読み難い。2010/06/12