内容説明
心理学や社会学の最新の成果を駆使して、東西のさまざまな宗教や神秘思想に通底する構造を求め、神を、たんに個人のこころの問題としてではなく、個人を社会化させる構造的な力としてとらえる、画期的な宗教論。
目次
第1章 宗教を直視するための背景問題
第2章 構造的組織体の階層秩序
第3章 心理学と社会学をつなぐ環としての複合的個体
第4章 翻訳・変形・転写
第5章 「宗教」の用語法
第6章 信念・信仰・経験・適合
第7章 今日の宗教社会学
第8章 知識と人間的関心
第9章 方法・要約・結論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
30
トランスパーソナル(超個人)心理学の理論家の雄、ケン・ウイルバーの研ぎ澄まされた感性で「久遠の哲学」をベースに現代の機能主義、解釈学、発達論的構造主義等、広範に亘った論考が繰り広げられる。超個人心理学とは古くからあり、西洋ではプラトン、アウグスチヌス、東洋では仏陀、パタンジャリ、アサンガにまで遡ることができると云う。宗教心理学と宗教社会学への入門書と位置付けられ、人類の歴史と社会をトランスパーソナル的な次元へと向かう視点から捉え直し、新たな意味付けがなされているとも。興味深々だった。2018/12/18
Yasomi Mori
3
宗教=反合理とみなしがちな状況に抵抗し、前合理→合理→超合理の弁証法的発展段階を構想。宗教はその発達を促し助ける役割を担うと主張。全面的な合理化のうねりは必要な途中経過であり、それ自身において宗教的である、と。/社会学の成果を貪欲に取込みつつ、還元主義に陥りがちな傾向を強く批判してもいる。伝統宗教や新興宗教、マルクス、フロイトらの仕事を自らの体系内に位置付け直そうという野心的著作。「宗教」の定義を一望し、宗教の「合法性」と「本格性」の区別を導入するなど、分析の技法も勉強になる。難解で半年かけて読了。2017/03/25
tekesuta
0
合理的な心をそのままに超越する超合理と、合理的な心以前の迷信である前合理の混同が、宗教についての問題をややこやしくしているのだろうな。とはいっても、この2つの見分け方は難しいよね。 2013/08/25