内容説明
大自然の中で展開される昆虫たちの生のドラマを観察し、忘れ去られた自然への愛惜と、虫の見方を通しての東西文明論など、創見に満ちたナチュラリストの昆虫博物誌。読売文学賞受賞。
目次
めでたい虫
芋虫、毛虫、挾んで捨てろ
雌と雄とそのあいだ
昆虫図鑑の文体について
サラマオのモンシロチョウ
象牙の箸と杉の割箸
ヴェルサイユのジェラニウム
マイハートリープスアップ
飛龍虫の説
蝉涼し
聴ケドモ聞コエズ
ベルグマンの奇蹟
想い出の虫たち
防虫剤について
空想の庭園
ボン・グウ 鴎外の「田楽豆腐」
ネルヴァルの詩の中の蝶と蛾
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BIDDULPH
3
高砂族の話、虫の音が西洋人には聞こえない話、南方熊楠の話、さまざまなエピソードを交えて人間の愚かな行為(自然破壊)に警鐘を鳴らす。マメハンミョウやゲンセイ数匹を乾燥させて粉末にしたものを人が飲むと七転八倒ののち天国に行ける話にはぞっとした。しかし、奥本先生の多読には驚かされる。2013/07/03
火曜日
0
高砂族の民話を翻訳したおそらく無名の四人を「それにしてもいずれの名前もなんと透明で、拵物で、爽やかなことであろう。花岡一郎、花岡二郎、南洋一郎、本郷義昭。」と言い切ったp.245と昆虫図鑑の文体に関するp.60-89が心に残った。2022/11/22