出版社内容情報
『壁』『砂の女』『箱男』そして『カンガルー・ノート』まで……つねに「前衛」たることを貫きながら戦後日本を駆け抜けた作家・安部公房の異形の想像力は、いまなお私たちを魅惑してやまない。小説の枠を超えたメディアの越境者として、時代に巣喰う不安の在り処をあらゆる角度から触診しつづけた飽くなき実験の数々。その全貌を見渡すべく迫る、100年目の総特集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
5
とりあえず各論考で脚フェチ作家だったと認定されまくってることは判った。当時のマルクス解釈に則りながら『資本論』における物神崇拝(フェティシズム)の議論を脱臼させる硬派な思考を持ちつつ、他の同時代文学は背景や文脈が現代と違い過ぎてもう読めないのに対して時間空間の限定が無い不思議な普遍性を感じさせるお陰で若者にも読まれ続ける、独特な作家。ワープロを最初に日本で使ったという神話が解体される一方、戦後演劇史の神話から徹底的に排除されその見間違えようのない活躍が忘却されてるなど、テクスト解釈以外の人物像研究も豊富。2025/01/30
Kiki
0
割とバランスが良い作りだった。カバーされている安部公房の作品も多岐にわたり、視点も然り。フェミニズム視点で見ると批判要素が増えるかもしれないけど、作品に登場する女性登場人物のテクスト分析はもっとあってもよさそうだと思った。この現代で、読み返すのならば特に。冒頭の対談が一番面白かった。2024/12/05