出版社内容情報
精神科医・中井久夫の広大な足跡をたどる
長きにわたり戦後日本の精神科医療の最前線に立ち続け、阪神・淡路大震災後のこころのケアに尽力するとともに、エッセイの名手にして詩の翻訳家としても知られる中井久夫。体系性を拒みつつも尽きせぬ豊饒な多面性にひらかれたその世界を一望する、追悼特集。
目次予定*
【討議】加藤寛+最相葉月/斎藤環+東畑開人
【寄稿】伊藤亜紗/上尾真道/上野千鶴子/江口重幸/大澤真幸/北中淳子/小泉義之/杉林稔/高原耕平/中西恭子/中村江里/中村明/檜垣立哉/牧瀬英幹/松本卓也/松本俊彦/美馬達哉/宮地尚子/村澤和多里/森川すいめい/山中康裕/山森裕毅…
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shikashika555
50
中井久夫著作に出会ったのは『災害がほんとうに襲ったとき』だった。ほかの著書は難解なことと独特でかつ細かすぎる内容についていけずであった。 『災害が___』では「本当のこと」をこの人は言うのだという強い印象。皆気づいてはいるが言わない方が、知らないことにしておく方が丸く収まることを言葉にして、言う人。アグレッシブな印象。 その後もどこかで惹かれながら理解できないさみしさめいた感情を持っていた。 この度「100分で名著」で取り上げられたのを機にいくつかの著作をあらためて読み直している。 店頭で見た本書も購入。2023/01/01
huchang
5
巨星墜つというにふさわしい人が亡くなった。業績は?というと、私にはPTSDの人だった。主張があまり強くないが、静かに様々なことをやってしまっている人。やってのけるというと、大山鳴動してる感じだけど、あれ、山なんかあったっけ?いつの間に積みあがってたの?という。そんな勝手なイメージを持っていたのだが、当たらずとも遠からずというお人柄と、博覧強記ともいえるその業績を遅ればせながら知ることになった。追悼文はどなたに依頼するかで、こうした冊子の出来は半分以上決定されるが、人選も含めていい特集だったと思う。2023/03/09
咲
5
2022年8月8日。88歳。中井久夫が失われてしまった。あまりにも遠い人なのに、揺さぶられてたまらなかった。中井久夫との出会いは大学時代。いとしの教臨ゼミと、そこから派生した、さみしい人の読書会。「無意識の発見」をみんなで読み切った歓び、サリヴァンの独特の言い回しを使い回して遊んだ内輪の笑い、「心的外傷と回復」を読んでは繰り返し忘却する心理機制。学問への憧れに色をつけてくれた人。学問を通して、わたしを人に結びつけてくれた人。その思想と言葉に心酔してしまう。学術と文学が混じり合う風景に震える。2022/12/28
ぽぽる
1
多岐にわたる中井久夫論。特に、精神医学の危機と回復ーー医療人類学からみた中井久夫、がよかった。2023/10/26
Jau
1
本屋行ってよかった(溜息)ー。 統失を革命に喩えている。 革命は後が大切と、 ロシア革命の後の今に続く騒動を書いた「ロシアの中のソ連」を読んだ日に。2023/02/23