出版社内容情報
主君を裏切った逆臣として誰もが知っている明智光秀の生涯の全貌は、実は謎のベールに包まれてる。最新の研究成果から見えてきた決起の理由や出自の謎など歴史学の考察はもちろん、文学、哲学、精神分析などジャンルを横断し明智光秀に迫る決定版的特集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
95
一冊丸ごと「明智光秀」特集。「麒麟がくる」の時代考証を担当する小和田氏などの歴史学者だけでなく社会学者や哲学者など24名が寄稿し、様々な切り口で光秀の謎への持論を展開。天野氏の他の裏切った家臣と比較した論述はなるほどと。信長は武士の論理の極致となり歴史の理性で排除されたというヘーゲルの理性の狡智に当てはめた大澤氏の論述や非合理なまでの忠節と反逆による成就という小泉氏の論述は独特な視点で興味深かった。福嶋氏の言う危険な反逆者から消失する媒介者となった光秀のアイロニーが、この謎が人を惹きつける要因とも思えた。2020/01/08
春風
19
明智光秀を巡る論考集。日本中世史だけでなく、考古学や民俗学、社会学、哲学、近世文学、文芸批評等々のあらゆる専門家が、独自のアプローチで論じている。ヘーゲルの歴史哲学を用いて、明智光秀という人間の意味を読み解くなど、さすが現代思想と思わせるが、歴史学者の論考を読んだ後だと、そもそもの史実の認識が甘い部分が際立ってしまい、机上の空論といった感が強い。論考は玉石混淆ではあるものの、概ねは面白く読めた。ここまで論じられて尚、光秀が謎多き人物である事に変わりはない。大河を機に新史料が日の目を見ることを楽しみとする。2020/09/29
niwanoagata
13
多くの分野の専門家が書いていて非常に良かった。ただ、専門家と言っても歴史以外の人もいて、全く的外れなことを平気で書いてるのがいて残念。 5つほど不要な文章があった。変えるならば石川美咲、呉座勇一、谷口克広、乃至政彦、谷口研語(敬称略)と交代してほしい。 長くなるので個々の感想は述べませんが、特によかったのは井上優氏、堀新氏、神田裕理氏、平井上総氏金子拓氏。 先述の通り一部人選を間違えているが、全体的には非常に良かった。今後も他の雑誌でもこのように多くの研究者の論集を作って欲しい。2020/04/05
chang_ume
12
研究ノート的な論考が並び、肩の凝らない内容です。織田政権・明智光秀研究の最前線がうかがえて便利。各論者の競作めいた我田引水ぶりも楽しい。『石谷家文書』の頻用が今の傾向ですね。織田信長の四国政策転換から本能寺の変を読み解く視点。一方で連歌・茶の湯といった周縁地帯から、新鮮な光秀像も構築される(光秀はもてなし好きだなあ)。そして極めつけは小泉論考で、これぞ『現代思想』といった内容。丸山眞男から頼山陽を引きつつ、「忠誠と反逆」のダイナミズムを語る。こればかりは史料を並べるだけでは見えない。勉強になりました。2020/01/31
さとまる
5
「麒麟がくる」の小和田先生を初めとして、名だたる研究者の先生方が寄稿していて内容的には非常に充実している。特に神田先生の「光秀と朝廷」は戦国期の朝廷の性格と光秀の京都における政務運営が解説されてて非常に勉強になった。1800円とお高かったけど、元は十分に取れる。2020/01/28