内容説明
介護を頑張りすぎることへの問題提起。患者の人生や性格に合わせた介護が求められる現在の認知症。患者をよく知るからこそ、家族は悩み、憤り、反省する。認知症を理解し、介護へと導かれ、患者との関係を再構築するまでの家族の営みを丹念に描く。
目次
序章 新しい介護、新しい問題
1章 認知症の概念分析へ―本書が問うもの
2章 認知症に気づく―何が、なぜ「おかしい」のか
3章 患者にはたらきかける―「より良い介護」を目指して
4章 悩みを抱える/相談する―規範を再構築する
5章 他の介護者に憤る―介護家族による「特権的知識のクレイム」
終章 新しい認知症ケア時代を生きる―悩みが映し出すもの
著者等紹介
木下衆[キノシタシュウ]
1986年、大阪市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学、博士(文学)。現在、大阪市立大学都市文化研究センター研究員、東京都健康長寿医療センター研究所非常勤研究員ほか。専門は医療社会学、家族社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
53
「なぜ家族は介護してしまうのか」を、賛美するでも非難するでもなく、その構造的要因を考察する。「介護の理想は上がっている」という。社会インフラや介護専門職のレベルも上がっている。でも「個人を尊重する介護」を目指し、被介護者の人生や個性を1番理解している家族は、介護専門職では担えない役割を自ら担っていき疲労しているという。著者は「介護の問題はあなた個人でなんとかできるものではない。他の誰もがなんとも出来ない問題でもある。その誰にもなんともできないものを、それでも皆で支えていくことが介護だ」という。深いな、、、2021/11/12
Olive
8
現代の認知症介護とは、患者の人生が透けて見えるようなかかわりあいのなかから進めていくものとなった。その介護経験は、患者を中心としたすべてのアクターを巻き込んだ「家族の新しい人生」を構築していくことである。 患者の埋もれた力は周囲の働きかけで発揮できる。その働きかけは時に家族は「私しか知らない」という表現をもってされる。その視座は、良い介護をめぐって家族の対立が起こる点、介護を抱え込むということ、また、自分しか知らないという設定は患者本人への力を見出す点において新しい認知症ケアの潮流と対立する。2022/06/06
ゆうすけ
6
タイトルからイメージした内容とは若干違っていました。社会構成主義的な内容です。参与観察のエピソードはとても面白い。介護者と専門職と患者を巡る関係性を描いた感じでしょうか。「意識が高い」介護者がいかに「良い」介護をするのか。答えのない問いかけです。著者の書きぶりがややドライに感じられるのは福祉よりも社会学の文脈で分析しているからでしょうか。家族社会学と言う分野があるのは知らなかった。僕よりも年下の著者がなぜこのような分野の研究をするようになったのか個人的に興味を持った。医学書院から是非次回作を期待します。2021/01/16
すずなり
2
89歳の母が要介護2となったタイミングで新聞に掲載されていたから買ってみた。私の本音は、自分の生活を犠牲にして介護したくはない、といったところ。なるべく介護サービスを利用して乗り切りたい。この本にその解決策を求めたが、登場する介護者がみな優秀過ぎて参考にならない。要介護者の「その人らしさ」を大切にする、というのはわかったが、介護する側の「その人らしさ」をどうやって担保すればいいのか。生活保護申請における考え方と同じようにならないものか。家族はなぜ介護しなくてはならないのか。2022/04/27
kokekko
1
タイトルではなくサブタイトルの「認知症の社会学」がもっとタイトルに相応しい本だった。2019年とわりあい最近に発行された認知症介護の「今」の本。豊富なフィールドワークの情報がありつつ、不必要にウェットにならないところが良かった。2024/07/25
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