内容説明
子育ては『わくわく』『つらい』『不安』?多様化する育児雑誌が映し出す子育ての現在。子育てをめぐることばの束(言説)を分析し日常に浸透する密かな統制を読み解く。育児メディア研究の最前線。
目次
序章 育児言説の社会理論
第1章 育児戦略と言説の変容―育児雑誌の半世紀
第2章 変容する育児雑誌の現在―「ジェンダー化」・「教育化」の視点から
第3章 2000年代型育児雑誌にみる父親の「主体化」
第4章 新自由主義下の再生産戦略とジェンダー―「子ども・子育て」という争点
第5章 住まいの教育的編成言説の変容―「開かれた住まい」のパラドクス
第6章 子どもという願望と再生産のポリティクス―妊娠・出産情報誌からみえること
第7章 育児言説と象徴的統制―家族と教育の危機を超えて
著者等紹介
天童睦子[テンドウムツコ]
東京女子大学大学院文学研究科修士課程修了(社会学専攻)。早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。名城大学人間学部教授を経て、2015年より宮城学院女子大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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katoyann
14
育児言説をバーンスティンの言説理論を参照としながら分析した社会学の研究書。育児雑誌の読者対象が父親へと広がりを見せ、性別役割分業が問い直されているのかと思いきや、かえって男性の性役割を糊塗する言説の効果などを明らかにしている。育児雑誌では親主導の教育が推奨されるが、そこには教育産業の思惑が見え隠れする。ともすればお受験のように優勝劣敗の競争に子どもを導いていくことが評価されてしまう傾向があることを明らかにして、子どもの権利を軸とした新しい教育実践の在り方を模索している。2024/08/10
bocboc
0
緻密な理論的基盤の元で育児メディアに表出される言説を淡々と分析した労作。社会の権力構造、それに基づく「戦略」が現れやすい育児という営為に関する言説の分析は巷に驚くほど少なく、こういった客観的かつ批判的な視点や作業は現場で育児を行う者にとっても大きな救い。個人的には1年前に親になって以来育児メディアの言説とそれが子育て業界内で主流となり疑いを差し挟む余地のないように見える状況に対してずっと抱いていた違和感が、特に権力との関係で、言語化され対象化されたように感じた。著者らの仕事に感謝したい。2021/08/05