内容説明
嫁入り道具にも現金獲得源にもなる絨毯。市場経済化で、製作の基盤となる世帯どうしのつながりはむしろ活性化し、生活の隅々まで浸透した。グローバルな経済にもローカルな習慣にも呑み込まれず、変化を共に生きる女たちのしなやかな生を描く。
目次
第1章 モノを作る生活世界とグローバリゼーション
第2章 トルコ絨毯のグローバル流通史
第3章 ミラス―絨毯織りたちの村の日常
第4章 結婚におけるモノの競演
第5章 社交としての絨毯生産
第6章 絨毯織りたちの絨毯の使いかた―消費の多様性をめぐって
第7章 「花柄絨毯」―絨毯織りの村の西洋近代との出会いとその後
第8章 村から世界へ、世界から村へ―「真正な」絨毯と絨毯商たち
第9章 市場経済と交渉するものづくりの生活世界―グローバルに流通する手工芸品がローカルに「息づく」こと
著者等紹介
田村うらら[タムラウララ]
1978年生まれ。2009年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は人類学。現在、日本学術振興会特別研究員(PD、京都大学人文科学研究所)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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samandabadra
1
絨毯をめぐるトルコの村々の社会生活と社会変化を描いたもの。絨毯はその村にとってどのような意味があるか、象徴性と対照的な商品的価値などいろいろなものを帯びていることがわかる。商品として売れるかどうかは場合によってデザインやそのものを作る過程にも影響を与え打という意味でグローバル化と結びつける言説を立てて考える物言いはわからなくもない。真正性をめぐる問題はどのようなモノにも付きまとうが、絨毯の場合はこんなことをするんだというのが面白かった。商品が人間を疎外しない生産とはという言及も面白かった。2021/09/21
can0201
0
この本を知ったのが6月。HONZで出口会長がレビューしていた。価格の高さに暫く悩むも、頭から離れず、半ばヤケになって購入。数ヶ月積読の後、漸く頁をめくったのが昨晩。そこからはあっという間だった。学術書にも関わらずスイスイ読み進められるのはフィールドワークを基にした実話が散りばめられているから。僻村でしなやかに続く「伝統」工芸。グローバルに消費されつつ、また影響されつつも、ローカル性を失わない、暮らしに根差したそのモノに初めて興味を持った。またいつかトルコに行く時はきっと絨毯を買ってしまうに違いない。2014/02/15
ひいろ
0
研究のためにかいつまんでずっと読んでいた一冊。多分1年くらい抱えてましたね。トルコ絨毯についての知見がぐっと深まりました。人類学のフィールドワークを踏まえた研究なので、私の知識では理解の及ばない章もありましたが、非常に勉強になりました。最後まで読んでみると、この一冊にかけられた時間と熱量を感じ、達成感があると同時に、ここまで学問を極めることの難しさを痛感しましたね。2020/05/01