内容説明
爆発的な衛星放送の普及、インターネットの広がりは、イスラムをどう変えたか。エジプトを舞台に、普通のムスリムがグローバル化の波にどう対応してきたかをいきいきと伝える。
目次
第1章 近代化からグローバル化へ―イスラムの世界性とグローバル化
第2章 ウラマーと呼ばれる人々―伝統的「知識人」の経験した近代化過程
第3章 「俗人」が語り始める―一般信徒の見せる独自の動き
第4章 教育のなかのイスラム―学校ではイスラムはいかに教えられるか
第5章 新しい説教師の活躍―上昇する中間層とそのイスラム志向
第6章 グローバル・メディアとイスラム―新しいメディアの生む可能性
著者等紹介
八木久美子[ヤギクミコ]
1982年東京外国語大学外国語学部卒業。1990年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。修士(宗教学)。1993年ハーバード大学文理大学院修了。MA(宗教学)。2001年ハーバード大学文理大学院より博士号(PhD)取得(宗教学)。東京外国語大学外国語学部助手、助教授、教授を経て、2009年より同大学大学院・総合国際学研究院教授。専門は宗教学。特にアラブ世界を中心とした近現代のイスラム研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふみ
2
サダト以降の経済自由化の波とイスラーム潮流の中で育ったエジプトの中間層は、世俗主義的な古い中間層とは異なり、ビジネスへの関心と同時に宗教的な価値観を非常に大切にする。そうした彼らの価値観に答えたのが、流暢な英語を話し、科学的な知識を持ちながら、経済的・社会的成功をイスラームの枠組みで積極的に位置づける、「俗人」説教師だった。 アラブ諸国の民主化は例外なくイスラム政党を台頭させる。グローバル経済の論理から切り離されることなく、ビジネスや科学の領域を含めてイスラームを実践したいという人々の強い意志が感じられる2013/01/24
kenken
0
現代エジプト社会における宗教的権威や知識の伝達、受容の変化を「俗人」説教師の台頭という現象に絞って丁寧に描いている。つなぎ手としての説教師といった巧みなムスリム社会の論理の説明に感心2012/11/25
Masayuki Shimura
0
【変化と抗変化と】大文字ではなく、個人レベルでの変化を眺めた小文字のイスラムを知るために非常に参考になります。著者がたどり着いた「俗人」という表現も言い得て妙だなと感じました。また、イスラムに関する言説空間とエジプトの社会の関係についての見識を深めることができるたも本書の魅力の一つです。2018/04/18