内容説明
フロンティアが消滅したアメリカと世界大戦へと突き進むヨーロッパを舞台に“偶然の仲間”の冒険、トラヴァース一家の復讐、無数の人々の出会いと別れが交錯する物語『逆光』。ポストモダン文学の巨人ピンチョンの千ページを超える傑作の訳者が贈る、ひとつの創造的注釈書。
目次
第1章 飛行船が見た風景(タイトルと印章;どんな時代か ほか)
第2章 光と複屈折(光と逆光;昼間の虚構と夜の現実 ほか)
第3章 次元と無限(新しい次元とタイムトラベル;四次元の起源 ほか)
第4章 新たなリアリズム(『ベデカー旅行案内書』;『ブリタニカ大百科事典』 ほか)
第5章 シャンバラはどこにあるか(シャンバラ、リーマン球、類推の山;シャンバラへの道 ほか)
著者等紹介
木原善彦[キハラヨシヒコ]
1967年生まれ。京都大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(文学)。現代アメリカ文学・文化専攻。大阪大学大学院言語文化研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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抹茶モナカ
13
ピンチョンの『逆光』に挑戦したい気持ちがあって、解説本から読んでみた。本編未読なので、評価は出来ないけど、翻訳者自らの著作なので、頑張って読んだ。解説本の段階から、難読だ。むむ~。2014/11/03
Ecriture
9
データベース的書物に対するデータベース的書物での応酬と言っていいだろう。これがピンチョンのAgainst the Dayに近づく道標となるのか、または果てなき妄想の迷宮への片道切符となるのか。ピンチョンを読むということは、自分が誰なのか、どういったデータへのアクセス権を持っているのかを確かめるということでもある。2011/09/22
メセニ
8
『逆光』の翻訳者による注釈書。作品論と呼べるほど網羅的に掘り下げているわけでなく、「かいつまんで」といった印象。後半には”コンサイス版『逆光』”と題して、1700頁の小説を20頁ほどに圧縮したあらすじが読めるが、当然これで読破した気になるものでもない。そもそも情報が過密すぎる(笑)ただし、より深く作品にコミットする為の仕掛けとしては優れた著書。再び作品を手に取りたいという気にさせる。おそらく『逆光』はまともに感想めいたものすら書けてなかったはずなので、もう一度チャレンジし自分なりにまとめたい。2016/01/15
壱萬参仟縁
6
米国文学の巽孝之教授の講義でピンチョンは出てきたので想起して借りた。19C末~WWⅠ時代を扱う。闇こそが光を存在せしめ、逆光(傍点)的位置関係では光が闇を作り出すという相互依存がある(58頁)。二項対立ではなく相互依存だと。文学のコンテンツに物理や数学の知識なくして馴染めないケースがあるが、本書はこうした知識を必要とする。1881年がベクトル解析考案されたことから(102頁)。2013/04/03
m_s_t_y
5
「逆光精読者 @shambhalian 」さんによる「読者を『逆光』におびき寄せるための仕掛け」。光と闇の二項対立の脱構築のところ、アルプス山中のトンネル工事現場と『V.』の下水道のワニ狩りに言及したところ、『重力の虹』の冒頭のテディ・ブロートが落ちるシーンの挿絵(こんなのがあるとは知らなかった)が面白かった。10年前、ピンチョンを読んでいた時にちょうど出版された木原さんの『無政府主義的奇跡の宇宙』にとても元気づけられた。この本にも同じように元気づけられるし、なによりもまた『逆光』が読みたくなる。2011/06/24